劇場公開日 2020年9月18日

  • 予告編を見る

「画映るわ変が方見の界世」TENET テネット つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0画映るわ変が方見の界世

2024年4月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

世界の見方が変わる映画。映画を観終わって信号待ちをしていた時、ふと歩いている何人かが逆行しているように見えた。
「そんなバカな…」と思って目を凝らすと、世界はなんの歪みもなくきちんと順行していた。当たり前の世界なんだが、ホッとすると同時に奇妙にも感じられた。
そんな風に感覚に侵食してくるような、味わったことのない映像体験が「TENET」にはある。

もしかしたら、何も「知らない」ことの方が、「時間の逆行」よりも重要な事かもしれない。
理解できない事を恐れなくて良い。「知らない」ということは、目や耳から入ってくる刺激にとって、大きな驚異と感動をもたらすスパイスになりうる。
未体験ゾーンの衝撃は、未体験だから生まれる。体験後にその衝撃は来ない。

体験後にしか言えないこんなアドバイスは、未体験の人にとっては「何のこっちゃ?」で、未体験だから体験するまでわからない。
しかし、体験してからだと刺激と衝撃は「既に知ってること」になってしまうから「未体験」とは言えなくなるわけで…、あ~ややこしい!
まさに「TENET」的だ。
とりあえず、覚悟を決めて観た方が話は早い。

意外なほどノーランは優しくて、「名もなき男」と同様に作品世界に投げ出された私たちに沢山のヒントを与えてくれる。
そのヒントたちや今までに体験したことをしっかり心に「記録」しておけば、巨大スケールで展開される出来事に翻弄されつつも、未来と現在をつなぐ光明をとらえる事は出来る。
観測する私たち、観測の「記録」だけが「TENET」の中の指針だ。

一応言っておくと、翻弄され続けて脳幹が痺れても、「面白い!」と思う人は面白いし、理解不能なことが不満な場合は、例え後々理解できても「面白くない」事は変わらないと思う。
映像のこだわりに対して、エモーションの部分を掘り下げる場所が少なく、映画に情緒を求める人にとっては物足りないだろうな、と思ったのが正直な感想だ。

完成度は高いけど、観た直後はそんなに興奮できなかったなぁ~、と思っていたのに星4評価にしたのは、家路の間に私を襲った「TENET」効果が今もなお続いているからだ。
こうしてレビューを書いている間も、ふとした拍子に何かが逆行してくる気がして落ち着かない。
そして逆行していないことが奇妙に思えて仕方ない。
そんな感覚が味わえるのは、後にも先にも「TENET」だけだろう。

━━追記━━━━━━━━━━━━━━━━━━
と、ここまで書いて投稿したのだが、隣でノーラン信者(全作品鑑賞済み)の旦那が「全く面白くない!星1!」と激おこプンプンなので、それについて書いておこう。
あと、協議の結果星の数を1に修正することにする。流された訳じゃなく、熱量の問題だ。ふわふわした浮揚感に流されているのは私の方だな、と思ったから素直に受け入れよう。

「メメント」でノーランと衝撃的な出会いを経験した彼は、「ダークナイト」でその信仰を確固たるものにし、以来敬虔な信徒として作品に耽溺してきた。
「フォロウィング」を探し回ったのも良い思い出である。購入したDVDは今でも折に触れ見返していて、とても鑑賞済みとは思えないテンションで楽しんでいる。
そんなノーランに身も心も骨抜きにされた旦那が、「話はわかる。別に難しいことなど何もない!わかったからって、面白くないもんは面白くないんだよ!」とマジ顔のプーチン並みに怒り狂っているのである。はわわ。
確かにアクションは薄いし、ドラマチックでもないしな。
多分「インセプション」のアクションか、「インターステラー」のドラマ、どちらかだけでもあったなら彼はそんなに怒らなかっただろうな。

「つまんなかった時は、つまらないってちゃんと言っておかなきゃダメだ!」との事なので、ここに「記録」しておく。

コメントする
つとみ