はるヲうるひとのレビュー・感想・評価
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皆芝居の密度が凄い
今や都市伝説のような、あの島を舞台とした作品。
島という物凄く閉塞感のある、先の見えない暮らしの中で生きる人たちの偶像劇です。
物語の軸となる兄弟3人を始め、皆芝居の密度が凄い。もうそこが見所でしょう。
ボケてない佐藤二朗がすっごい新鮮で、だからか余計に強烈な印象がありました。
芝居のテンポは同じなのですが、笑いの隙が一切ないので見ていて緊張感があります。
そして山田孝之の演技がずば抜けている。
特に山場となる独白のシーンは、瞬きするのを忘れてしまうように魅入っていました。
この作品、二人の芝居で回っているといっても言い過ぎでないでしょう。
終始諦めの中で生きる人々を描いているのですが、これが観ていてちょっとしんどいですね。
そんな本当先の見えないような島の暮らしなのですが、そこにミャンマーが良い風を入れてくれるんです。
そしてこのミャンマーが割と物語のキーになっていて、やっぱり笑顔でいる事って大事なんだなって教えられました。
そして、それを感じ取ったのか最後は笑い合っていましたね。
母が言っていた「笑え」の教えのように。
この作品、とても初監督とは思えない仕上がりで、次作にも大きく期待してしまします。
何というか佐藤二朗という男の、新たな側面をしっかりと目にしました。
やっぱり観る人を選ぶテーマや作風だと思いますが、とても心に残る良い作品でした。
“まっとう”とは市町村合併する前の白山市。ちなみに今でも松任駅。
“嘘”という漢字は虚ろな口・・・などと漢字の成り立ちを語る癖は『肉子ちゃん』にも通ずるものがあった。違いは肉子ちゃんは明るく、哲雄は怖い・・・まぁ、普段の彼の演技を知ってるからかもしれないが。
最初にタコの映像が出てくるけど、これをビニール袋に入れた様子はまるで得太が哲雄から逃げ出せないでいるメタファーなのだと思わせる序盤。パシリの得太とイブキ。兄妹でなぜ逃げ出せない?などと考えながら見ていたけど、相当なトラウマを抱え続けてきた得太と病弱な妹じゃ無理があったんだろう。
ストーリーは陰鬱でしょっぱいハナクソのようなものかもしれないが、山田孝之の演技力が凄すぎて、他の誰もがそれを超えられないほどだった。坂井真紀だって凄い演技なのだが、彼には敵わなかった。そうした個性的な面々が佐藤二朗から逃れられない鳥籠の鳥。そして、個性的な売春婦たち。
そんな中でも客の一人、薬局店主に搾取されているミャンマー人男性がひときわ目立っていた。「愛のあるセックス」を求めていた童貞くんだったのに、リリーという小柄な女性に恋するようになる様子が笑いとともに描かれていました。塗り薬のネタや、キスするときに何故目を開けているのか?ということが伏線として生かされていたことにほっこりさせられます。
原発反対運動なんてのが余計なサブストーリー。誰も真剣に反対していないところが痛すぎた。でも彼女たちだけは嫌がっていたよね。
洋邦問わず古くからある売春宿物語。ほとんどが女性たちが蔑まれても、たくましく強かに生きていく姿を描いているけど、この作品も違わず生きる希望を見いだせるものでした。また、差別や貧困といったテーマとともに最後には同性愛の問題まで提起するなんてのはちょっと詰め込み過ぎ感もあったけど、佐藤二朗の熱量を感じられる作風には驚かされる。今後もクリエイター側としての彼に期待します。
令和になってこういう題材で映画を作る人がいるとは思わなかった。女優陣が濃い。何だか泪が出てくるし。
①昭和では女郎屋・売春宿を舞台にした映画は星の数ほどあった。平成或いは21世紀になって極端に減った。時流かな、と思います。だから「はるヲうるひと」ってどういう意味だろうと思っていたら“売春”のことだったのね。なあんーだ。②佐藤二郎はTVでの一本調子のお笑い演技が鼻につくけど映画作家としてはなかなかの腕前があったんだ。ちょっと見直しました。③昭和の女郎屋映画は暗い雰囲気のが多かったけど、この映画は暗いようでどこか可笑しいのが宜しい。単に苦界に沈んだ女たちを悲しく描くのではなく「どっこい生きてます」という視点が話の支えになってます(まあ、昭和の映画でもありましたけど)。④薬局のお婆ちゃんとか、寒いのに日焼けしようとしている男とか、処女と筆下ろしするために売春宿にくるミャンマー男とか、時々挿入される本筋とあまり関係ないところで笑わせてくれます。(ミャンマー男はその後本筋に絡んできますが。)⑤クライマックスで思わぬ真相が暴露されて、それまでのモヤモヤが晴れるという話の構成はロマン・ボランスキーの『チャイナタウン』(そういえば『クルエラ』もそうでしたね)をはじめ古今東西の映画では珍しくありません。ただ、この映画でも彼らの抱えている問題の深刻さが分かっても何も解決されないのが切ないところだけど。⑥坂井真紀が言う『何かに成れても成れなくても何とかなるわよ。』という諦感はあらゆる人生に共通しているかも。⑦難を言えば哲男の役は佐藤二郎がやらない方が良かったのでは。でもやりたかったんでしょうね。おいしい役だもの。⑧あと、どうでもいいことですけれども、レビューの中に雰囲気だけで映画を作るな、みたいなことを書いている人がいましたが、雰囲気だけの映画でも佳作・秀作はあります(この映画が雰囲気だけの映画と言っているわけではありません)。大事なのは話の中身云々より映画としての力があるかどうかということ。一から十まで説明してくれるような観客に媚びる映画ばかりを作る方が映画を駄目にします。かの淀川長治先生は仰いました。『どんな駄目な映画でも私は一ヶ所でも好きなところを探そうとして映画を観ます』『映画とは格闘すること。一回や二回観ただけは本当にその映画を理解できたとは言えません。』確かに時間潰し(カップルに多い)に映画を観たり、分かりやすい映画しか観ない人には向いていない映画であるのは確か。ちゃんちゃん。
渡鹿野島のことですよね?
ようやく公開出来ましたね。
佐藤二朗ファンなので鑑賞です。
佐藤二朗の怖い1面や山田孝之と仲里依紗の演技はなかなか見ものです。
ただ、、、ストーリーはイマイチかな。
確かにちょっとすごい話だけど、予想は超えてこない。「渡鹿野島」を題材にするならもっとグロかったり怖かったり、逆に夢の島やファンタジーだったり、もっと何か欲しいところです。エロも特に凄くはない。
春を売る人を、単純にハナクソ呼ばわりして、「可哀想な人」で終わってしまうのは絶対に良くない。
結局何も起きないのかーい。という感じでした。
演技はすごいけど。
また、佐藤二朗節と言えるようなセリフが沢山ありますが、あれは佐藤二朗が言うから面白いのであって、他の人が言っても面白くはない。
佐藤二朗の監督・脚本・出演、山田孝之主演で映画化。観終えて、やる気...
佐藤二朗の監督・脚本・出演、山田孝之主演で映画化。観終えて、やる気漲る気持ちを感じる。いいね!
振り切った演技
出演している役者さん達の鬼気迫る演技は良かったですが、それ以外は??? 何が訴えたいのか?テーマ設定はどんなものでも、何か訴えるものがあると思うけど、この作品には感じられませんでした。
ハナクソよりもしょっぱい結果に…
1970〜80年代の映画みたいだったな。
ストーリー自体は全体的にハッキリしなかった。
描かれているのが基本的に1つの置屋なのに、そこに携わる人たちのことがイマイチ見えてこない。
単にまとめると「哲雄(佐藤二郎)にビクビクしながら生きている人たち」という印象。
それでも約2時間観ることができたのは、役者陣の演技力のおかげであって。
これらは上記のことを差し引いてもおつりが来る程素晴らしかった。
ただ、この映画が作られた想いからするに、演技よりも話の内容がメインで魅せる作品だったのかな。
結果、ハナクソよりもしょっぱくなってしまった。
佐藤二朗の気持ち悪さは買う。しかし撮り散らかした感。
「宮本から君へ」で魅せた不気味な佐藤二朗は買う。
山田孝之の流石の受け演を得て自身の気持ち悪さ描出に成功。
だが物語に難あり。
何がどう収まったのか分からず、これなら横溝正史を正面から撮ればと。
撮りたいモチーフを撮り散らかしている感も。
惜しい。
期待しよう。
佐藤二朗の狂気が愛を際立たせる
素晴らしかった!
今まで観たことのない佐藤二朗
今まで観たことのない山田孝之。
役者としての真摯な覚悟を身体を張って見せてくれた坂井真紀。近藤洋子。笹野鈴々音。仲里依紗。
好感度やイメージではなく作品に実直に向き合うプロの姿勢にKOされました。
売春をする人ではなく確かにはるをうるひとだと感じました。人の心を少し温めるはるをうるひと。
売春はお金で愛のないセックスを売ること。しかし本作の遊女のみなさんはどこか人間臭く優しく差別のない人たちでした。
特に純子を演じた今藤洋子さんが絶妙なツッコミで笑いを封印した二朗さんの代わりに殺伐とした空気を何度も和らげてくれました。
そして本作のキーマンとなるミャンマーから来たユウさん(太田善也さん)がずっと最高です。嘘のない純粋さでりりさん(笹野鈴々音さん)を一途に愛します。
りりさんとユウさんの愛のあるキスを観た瞬間、胸が締め付けられました。温かいフリの回収に涙。
佐藤二朗演じる哲雄の狂気があるからこそ作品に溢れる優しさが際立ちます。
本作での佐藤二朗さんの挑戦と携わった全てのスタッフさんと役者さんに心から拍手を贈ります。
佐藤二朗と山田孝之の役者魂に拍手
佐藤二朗さん、ただのおもしろオヤジではなかったのですね。あの冷酷非道、血が通ってる人間とは思えない言動、スゴかった、悍ましかった。
口ではいいこと言ってんのかと思いきや、突然の豹変。めちゃめちゃ怖すぎました。
あー、この方、アル中、DV夫、ダウナー系の役、めっちゃハマるんだなと、新たな発見です!
山田孝之も3年ぶりぐらいにくる重ーい役って仰ってた通りの、底辺も底辺、本当にクソの役でした。
彼の作品、いろいろ観てますが、あそこまで生きている意味何?みたいな役は初めてかもです。
相当、辛かったみたいですね、あの気持ちを保つって、一日中泣いてる日もあったって言ってましたね。
抱えているものが重すぎて、つぶされそうだったけど、お父さんとの約束を頑なに守って、病気がちな妹をいつも守って、必死にひたすら客引きをして毎日生きてきた得太。哲雄と対峙するシーンの緊迫感はさすがでした。
置き屋の女郎たちも、そこに女を買いに来る男たち、そこには何一つの光さえもない。ただの色欲が蠢く空間。作品中、ただ一つだけあった一点の花は、同じように女を買いに来た1人の客、向井理。
住む世界が違う男の輝き。やってることは同じなのに、そこにいる存在の違和感はなんだろう。
そして、唯一言える確かなことは、得太といぶきの母親、哲雄の母親もそれぞれ自分の子供を心から愛していたということです。
佐藤二朗の別の魅力を知る
自分はコメディアンとしての佐藤二朗のファンで、テレビドラマ版DEATH NOTEで真面目な刑事役で出てた時等は(別にこの役二朗さんじゃなくていいのにな)と思っていたくらいでした。ザ・ファブルでも彼の魅力を引き出せていたとは思えず、やはり福田雄一監督のように好きにやらせてくれる監督か、斎藤工監督のように佐藤二朗のために前振りを用意してくれないと面白くないのかなと思っていました。そこへ佐藤二朗自身が監督ということでもうそれは好き勝手やるんだろうな、と思っていました。
いや、めっちゃこええー!
すごいパワハラを静かな口調でやるので、5秒後に何してくるか全然読めない恐怖。性的表現もこの人の時だけ異質なので、これ自分で演技プラン作ってるなんて実の娘見たらどうすんだと心配になりました。
静かな人が怖いというパターンはよく見ますが、突出していたと思います。
コメディ部分も他の役の人(特にミャンマーの人) でしっかりカバーしているので、怖さと笑いと愛についてバランスよく描いていると思いました。
佐藤二朗って役者なんだなと
出てる役者さんみんなすごい、、物語に引き込まれた。
とくに、佐藤二朗の優しい物言いの中に狂気が見え隠れするのが怖かった。
元が舞台だからかなー。演者さんたちの感情の動きを物凄く丁寧に撮影していると思う。
表情と間が絶妙で、クスッと笑えて泣いて心がギュッとなる作品でした。
あとエンディングロールで、脚本協力で城定秀夫氏の名前見つけてフフッってなった。
恋の豚だけ見たことあるけど、結構面白かったんだよね。
生きづらさを感じてしまった・・
まず、平日午前というのに結構お客入っていたなぁ〜。熱狂的な山田ファンなのか、映画自体に関心あるのか・・期待しつつ観たのですが、とにかく重い。題材も結構エグいから好き嫌いが大きく分かれるかも。島から出られず、精神的にも束縛されると愛を忘れ、人間は人間ではなくなるのか・・でもそもそも人間って何?真っ当な人生って何?そんな哲学的なことを考えてしまった。人間ほど厄介な生き物もないなぁ〜。山田ファンは満足する映画でしょうが私としては妹役の仲里がかなり名演技でした。役者さんに★4つです!
エグミ不足
山田孝之ってすごいなー!!って思ったけれども全体的にはだいぶ物足りない。
もっとエグいのカモ〜ン!!
ベクトル的には嫌いじゃないけど
え?佐藤二朗そこまでやっちゃう?くらいのエグいの、次回期待してます。
三兄妹の演技の凄み
30代前半くらいのときだったか、ある友人が「売春宿だらけの島があるらしい」と言い出した。なんじゃそりゃ!?と思ったが、そのシチュエーションの凄さに衝撃を受けた覚えがある。今やルポルタージュ本が発行されるくらいの知名度はあるようだ。
本作はそんな売春島を連想させる島が舞台。佐藤二朗が脚本と監督を務めてるってことだから普通の話ではないことは想像していたが、それでも驚かされてしまった。配役といい、演じている役者さんたちの演技といい、凄みを感じる。佐藤二朗や山田孝之の演技も凄かったが、仲里依紗がよかった。彼女のあんな演技初めて観た。
あの兄妹の話と思いきや、あの売春宿の人間たちを描いた物語としてうまく収束していった脚本もよかった。どんな話なの?と聞かれてもその魅力をうまく伝えることが難しい。なんか知らないけど圧倒されてしまったんだもの。舞台脚本が原作のようだから、舞台版も観てみたいものだ。
実際のあの島はどんな感じなんだろう。行きたいとは思わないが、ルポルタージュ本を読んでみたくなった。
虚ろな口
原発建設が取り沙汰される離島の女郎置屋を営む営む3兄妹と4人の遊女達の話。
島の規模は判らないが3軒の置屋の一つ「かげろう」を仕切る暴君な長男と、腹違いで小間使いの弟&持病に伏しつつアル中の妹、そこから抜け出せない4人の遊女。
長男と弟妹のわだかまりやアイデンティティ、コンプレックス、ふしだらよこしま目クソ鼻クソなマウンティング自尊心等をみせて行き、コメディ要素はゼロではないけど、スラムか吹きだまりの様な場末感と陰鬱感満載で、登場人物達に直後的に共感出来るものは全然ないけれど、やり切れなさやそこからの変化がなかなか面白かった。
ただ、気持ちの持ち様に変化はあったかも知れないけれど、今後の関係性や営みにに大きな変化はあるのかねぇ…という感じも残ったかな。
そして、結構キモの部分だと思うのだけど、黙っているのと作り話を語るのは違うと思うんだけどね。子供だった訳だし。そこがちょっと引っ掛かったかな。
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