劇場公開日 2020年9月25日

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「ハッパのせいで意外な展開に・・・ラテンならではのオチまで一気に描写する王道の潜水艦サスペンス」ウルフズ・コール よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ハッパのせいで意外な展開に・・・ラテンならではのオチまで一気に描写する王道の潜水艦サスペンス

2020年9月27日
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鑑賞方法:映画館

フランス海軍の潜水艦チタン号の音響分析官シャンテレッドは”黄金の耳”と呼ばれるほどの聴覚の持ち主。シリア沖での任務中に聞き覚えのない音を感知したシャンテレッドはその音の識別に失敗しチタン号を危険に晒してしまうが艦長グランシャンの機転で救われる。狼の歌声のような奇妙な音に取り憑かれたシャンテレッドは音の正体を突き止めると司令官に申し出るがその音はドローンのものだったと分析結果が出ていると告げられる。納得がいかないシャンテレッドは音の記憶を頼りに独自の調査である結論に辿り着くが・・・。

息の詰まるような神経戦を展開する絶妙のツカミから始まる本作、上記のあらすじは序盤も序盤。その後だいたい誰でも想像するような展開をなぞり始めるのですが、そんな予定調和をバッサリ切り捨てるグランシャン艦長の一言で豪快な卓袱台返し。恐らくここで観客の皆さんは真っ白になった頭の中で次の展開を掴み切れずに戸惑ったと思います。そこから先の話には触れませんが、あくまで手に汗握る潜水艦モノの肝をキッチリ押さえながら意外なオチまで一気に駆け抜けるストーリーは見事。低予算作らしく普通なら映像で見せるところを端折っているわけですが、その取捨選択が絶妙なので全く気にならない。ノリとしては『クリムゾン・タイド』や『レッド・オクトーバーを追え!』辺りの王道ストーリーを『空母いぶき』的なトンチで描写したみたいなタイトな作品。フランス海軍モノというのもレアですが、よくよく考えたらどエゲツない余韻を残す静かなエンディング、普通ならブルガリア辺りに外注しそうな特殊効果もほぼ自国内で完結させた製作陣の意気込みに脱帽です。オマール・シー、マチュー・カソヴィッツといったベテランのサポートも光っていましたが、チラッとしか映らない端役に『レ・ミゼラブル』の主演だったダミアン・ボナールを起用してたりしてキャスティングも手抜きなし。封切り2日目で観客は4人というのがもったいなさ過ぎる力作でした。

よね