劇場公開日 2023年3月10日

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「当たり前の自由…」Winny 高橋直樹さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5当たり前の自由…

2023年4月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

「緊張感のある現場だった」…出演のひとりである親友からの一言がなかったら、僕はこの映画を観ていなかっただろう。

この作品には、何よりも先に、金子勇氏を始めとする実在する人物に対する敬意と配慮が行き届いている。これは悪人は誰かを追求するのではなく、一人の無垢なるクリエイターが、なぜ、こんな体験をせねばならなかったのかを呈示し、いかにして「無実」を証明し、「当たり前の自由」を取り戻したのかを描くヒューマンドラマである。

映画表現というリアルに挑戦する試みとして、並走する愛媛県警の実直な警官の描写も側面から効いてくる。過剰の説明を避けて、吉岡秀隆演じる警官の目に宿る腐敗への嫌悪と恐れを必要最小限の情報で見せる。
体重を増やすことで役柄に同化したかのような東出昌大と三浦貴大も好演。個人的には、勝訴率の高い弁護士を演じた吹越満の芝居が良かった。

朝日新聞に掲載されたひとつの記事を端緒に、今や当たり前になったオンライン環境の黎明期を現出させた松本優作監督は20代でこれを撮った。日本映画もまだまだ可能性を秘めている。

高橋直樹