劇場公開日 2023年3月10日

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「日本映画の意欲作」Winny 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0日本映画の意欲作

2023年3月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

近年の実話を基にした作品自体が日本映画では珍しいうえに当事者も実名で登場する意欲作だ。事件の経過もすごく調べられていて、きちんと社会派映画としても機能していて、日本の警察・検察、そして司法の問題点をあぶりだしつつ、人間ドラマとしても完成度が高い。
この作品は、WinnyというP2P技術を用いたソフトを巡る物語ではあるが、技術の妥当性やディテールを細かく描くものではない。それよりも、日本の司法の異様さをあぶりだす裁判映画であり、法廷ドラマとして構成している。一番の見どころは迫真の法廷劇である。特に秋田弁護士による警察の尋問シーンがすごくエキサイティング。人質司法によって捏造された証拠の問題や、メディアを利用した悪質なイメージ作り、有罪率99&の日本の司法のどこがまずいのかをわかりやすくストーリーの中に組み込まれていて見ごたえがある。
この映画を見ると、日本の冤罪を生みだす仕組みが良くわかる。最近も袴田事件の再審が決定したニュースなどがあったが、冤罪を生まれる土壌は、21世紀になっても温存されていて、最新テクノロジーをめぐる事件でも暗躍していたのだ。

杉本穂高