劇場公開日 2022年2月4日

「長編小説を、2時間尺の映像に押し込むと残念な結果になり易い」鹿の王 ユナと約束の旅 isukeeさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0長編小説を、2時間尺の映像に押し込むと残念な結果になり易い

2022年10月7日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

本屋大賞を受賞した年に原作を手にとって一気に読了、
ワクワクが止まらず読後の爽やかな余韻もあって、
原作は文字通り傑作でした

当時、保育園児だった長女が、書籍の表紙絵に惹かれて、
「読んで!読んで!」とせがまれて、
そのまま音読しても園児に分かるはずがないから、
要約しつつ子供向けに分かる言葉で、
毎晩寝る前の30分間だけの条件で、
2週間かけて読み聞かせたこともあった
それを何度も何度も繰り返されて1年くらい続いた記憶がある
それ以来、娘はヴァンの大ファン、サエも好き、もちろんユナも好き
マコウカンの失態を面白がり、
湯治場でヴァンがユナで股間を隠すシーンで いつも爆笑
ラストシーンで、
絶望の淵に立ち、悲恋に押しつぶされるサエにふれると、
「大丈夫、ユナがヴァンを見つけてくれる」としたり顔

こんな具合に原作は長女の大のお気に入りに。
それで映画化の報を聞いて「観たい!!」とリクエストが募り、
先日、親子揃ってやっと 映画版を鑑賞したのですが、
「何これ??」「全然違うーー」
「面白くない」という小学生になった長女の反応
まさにこれ、この反応が全て

あの大作を 無理矢理に
2時間のアニメーションに収めようとした結果、
原作のストーリーは大幅に改竄されて、
キーキャラクターであった、
リムエッル、マルジ、ミラル、スオッル、ナッカ、
皆その存在は消され、
ヴァンの死生観、サエの恋心、オーファンの先鋭化、
リムエッルによる謀略、シカンの殉国、
これらに係る綿密な描写は全て削られ無くなった
原作と映画版の間には
品質の落差があり過ぎて本当にがっかりした

やっぱり長編小説を映画化すると失敗作になりやすい
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」も小説は傑作なのに、
映画化すると駄作になったほど
一方で「納屋を焼く」を映画化した「バーニング」は佳作だったし、
小説を映画化するなら、元ネタは短編小説に限る、という印象

鹿の王を映像化するなら、
映画じゃなくて地上波向けに24回放送だったら よかったのかもしれない

伊助