劇場公開日 2019年7月19日

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「力がある映画は、想像力をインスパイアしてくれる」工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 マツドンさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5力がある映画は、想像力をインスパイアしてくれる

2021年1月2日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

どこまでがフィクションで、どこまでが実話か、なかなか微妙な映画です。
調べてみると、ブラックビーナスは実在したようで、パク・チェソ氏という人物。通信社が、インタビューしています。1997年、韓国の大統領候補者の支持者が、4億円を北朝鮮の役人に渡し、投票日の数日前に武力攻撃を依頼した、というのです。
韓国の大統領選挙が近くなると、北朝鮮は軍事的な威圧を強めることが多く、それは「北風現象」と呼ばれているそうです。
考えてみれば、北朝鮮のキム一族にしてみると、韓国・アメリカなどと軍事的緊張関係にあった方が、国内を引き締め、自分たちの地位の安定化が図れる。民主化をすると南北朝鮮は統一、キム一族は地位を追われ在任中の犯罪を訴追される、でしょう。
一方、韓国の保守系政治家や軍人、軍需産業界としても、北朝鮮との軍事的緊張があることによって受けられる利権が多くあります。敵と相互依存の関係。相思相愛です。
とすると、大筋においてこの映画は、真実なのかもしれない。少なくとも、証言と動機はある、と言えそうです。

そういえば、アメリカのトランプ大統領は、金正恩が大好き。表に出せないようなディールでも、独断で快諾してくれるとするなら、アメリカと北朝鮮は敵対しても、トランプと正恩は良きバディーでしょう。

もしそうなら、日本と北朝鮮にも、同じ構図があっても不思議じゃない。よくミサイルが飛んで来ていましたよね。公立の学校で、ミサイル攻撃に対する避難訓練まで行われていました。あのころ、改憲をライフワークにしていた総理大臣は、ちょっとは嬉しかったのかもしれません。北朝鮮が緊張をもたらすたびに、改憲に一歩近づいた、って気持ち。人の心は、多面的ですから。
さらに一歩踏み込んで言えば、機密費を使って…。
うーん、やめときましょう。決めつけちゃあいけません。ただ、あらゆる可能性を考えておくことは、未来への力になるはずです。

こんな想像もこの映画の楽しみ方の一つ。こうした映画が作れる韓国、韓国映画界の底力、なかなかのものじゃないでしょうか、ねぇ。

マツドン