システム・クラッシャーのレビュー・感想・評価
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少年とケアラーが築く関係性のドラマに引き込まれる
子供をめぐる状況に真摯に向き合った良作である。思い通りにならないと感情の歯止めが効かず周囲に牙を剥き暴走してしまう一人の少年がいる。その思いを十分に受け止めきれない母親がいる。そして彼の精神状態をどうにか良い方向へ導こうと懸命にサポートするケアラーがいる。本作は決して安易なハッピーエンドで問題をうやむやにしようとせず、少年と父子にも似た関係性を築く男性ケアラーの視点を介して「この子に何をしてあげられるのか」の試行錯誤や現実に私たちの意識をしっかりと参加させていく。そこで両者の心が通じあって心が安らぐ瞬間もあれば、逆にすべての努力が無に帰したかに思える瞬間もあって、さらにケアラーにはケアラーの守るべき生活があるわけで、その線引きも大切なのだということを痛切に突きつけられた気がする。希望や絶望ではない。これだけの選択肢とサポート体制があることに興味が湧いた。日本の現状についても知りたくなった。
子供に罪はない、ないけれど…
療育に携わっている身として、何か仕事のヒントになればと思い鑑賞。しかし想像以上の展開、結末に「いや〜やっぱり難しいよね」という再確認をして終わった。だが、それが良かった。
トラウマから起こる症状。
彼女に罪はない。悪いのは全部大人。
わかってはいるけれど、終盤彼女は死んだのか?と思わせる描写に少しホッとしてしまった。
そして「まだ、生きてたか…」とも思った。
他のレビューを読んでいると、母を責めるものが多かった。
しかし恐らくだが、彼女も障害を持っていると感じた。
彼女自身が不安定で、本来周りの助けが必要な人なのだろう。
それもあり、最初から母子にあまり希望が見えず、あの展開にもほとんど腹が立たなかった。
何というか、「ですよねー」みたいな気持ちが大きかった。
子供を育てる力を持っていないのに親になってしまった人達、実際にたくさんいる。
結局そうなると子供が可哀想なんだよね。
それでもどうにか生きていくしかないんだから、人生苦しいわ。
最後の曲にはすこし救われた。
24-054
子供の頃ってみんな自分をコントロールできない時期ってあると思う。
そんなこと思ったないのに言葉にしたり、
そんなことしたくないのに人を傷つけたり。
終始不快で、悲しくなる。
誰も彼も悪い人ではないのかもしれないが、
善人の顔にも限界がある。
幼いながらも自業自得ってことですかねぇ😥
児童教育の難しさを考えさせられる良質な社会派映画
大人の手に負えないほどの暴力のコントロールができない少女の生活を描いた映画。愛情に飢えた女の子とそれを受け止められない母親と父親の暴力といった家庭環境の問題や児童教育の難しさを浮き彫りにする。おそらく児童心理や児童教育の綿密な現場調査に裏打ちされていると思われるので、筋書きに説得力があり、違和感なくストーリーに引き込まれる。この問題児である少女を演じる子役の演技力も凄いが、彼女に付き添って、生活指導、矯正する役割の(ミルコ・クロコップに似ている)お兄さんの演技が存在感もあっていい味を出している。彼の奥さんはインド系(中東系?)と思われる容姿だが、移民大国であるドイツの社会背景も垣間見れる。少女はこの先、どのように成長していったかは観客の想像に任すが、タイトルにある「システムクラッシャー」には、いい意味でも悪い意味でも監督の強いメッセージが込められていると受け取った。
メンタルクラッシャー
感情を抑えきれない9才~10才の女の子の話 羨ましいくらいに元気ハツラツで、どこの施設も受け入れ拒否 父親と何があったんだろ…
ある男性に自然と触れ合うことで、メンタルは修復したかに思えたが…尾崎豊の世界観とも異なり、何を見せられているのか…
ああなっても母親は恋しいのはまだ子供なんだな〰️
鮮やかなピンク色があまりにも悲しい
もう少し、もう少しで軌道修正ができるのかも…と期待を抱かせながら常にああ、やっぱり…という絶望感が累積されていく。
感情と行動のバランスの取り方が生来通常より劣っていて、そのために周囲の、特に実親の理解が得られないことからさらなる二次障がいを負うことになっていく。
本人だってそうなりたくて生まれてきたわけでは決してないのに。
彼女は常に鮮やかな愛らしいピンクを身につけていて、それだけを見ると幸福感に満たされているかのようだ。けれど実際はどす黒い、鈍い混色が彼女の中も外をも埋め尽くしている。
そして当然の帰結のようなエンディングの後、エンドロールまでもが鮮やかなピンクなのがほんとうに痛ましい。
終始辛い
母親以外誰も悪くないのに、真綿で首を絞められてるような絶望感が良かった。
全員が業務の範囲内でベニーに親身だったし、ベニーも頑張っていたのに事態が好転しない、、、。ベニーの周りにいる同じように預けられている子もそれぞれ問題を抱えてることも回復が難しい一因かもしれない。
救いがない、が。
ベニーに現実で相対すれば、確実に無理って思う。手に負えないし、私に救える(と言ってしまうのはおこがましいが)わけでもなし。
でも9歳から10歳の子どもを切り捨てるわけにもいかない。ほんでベニーの母親よ、あれはあかん。その場しのぎで軽口を叩き、結局逃げる。
母親の家にいた男は、父親ではなく彼氏的なやつよね?弟妹の父親は誰なんかな。
計画的に子を成したとも思えない母親だしなぁ…
母親だけが悪いわけでもないだろうし、ベニーにオムツを押し付けたという父親がどこにいるんだかだし。
数多の施設に断られ、里親も見つからず、治療には住環境整わないととか、一時預かり施設に愛着湧かせたらあかんとか…親身になって愛着を持たれるとミヒャみたく自宅に来られちゃう。
ベニーにとっても支える人にとっても、どうすりゃいいのかわからんよね。
これどうまとめるのかなぁと思ってたら、ケニアの教育か矯正施設に行くことになったけど、搭乗前の手続きの途中で逃げ出すところで終わった。え?そのまま?救いがねぇよと思うが、ここで何らかの希望を見せられても嘘くさい気もするし。
このまま長靴下のピッピよろしく自由に暮せるといいけど、火宅はそうもいかまい。
ベニーの生命力を、ニーナ・シモンのAin’t Got No, I Got Lifeが象徴するエンドロールは、すばらしい。その生命力で生きていけたらいいが…
見ていて途中で気付いたけど、 なぜか施設の職員のスタンスで見ていた...
見ていて途中で気付いたけど、
なぜか施設の職員のスタンスで見ていた
せつなかった
どうすればみんなが幸せになれるんだろうかと、
考えさせられた
結論は出ないけど
何ができるのか、できないのか
1人の少女に関わるさまざまな立場の大人たち、その誰もが少女のふるまいに圧倒される。救えると思って近づき、私生活を揺るがされそうになった授業付き添いの男の気持ちや後悔も身に迫る。自分が生きてきた上で得た考えや振る舞い方を超える相手(しかも少女)に、何ができるのか。できないのか。自問しなくていいのかもしれないけれどつい自問してしまう、後を引く映画でした。
ディプリパン225mg
専門家ならベニーに◯◯症候群の病名を与えるのは容易だろうが、その治療経過を描いている訳ではもちろんない。「更生」させてしまったら単なる感動ポルノだ。
「こちらあみ子」みたいな余韻なのだが、味付けは対極かな。
大人がわかってくれないのは世の常だが、逆に本当にわかってやれるだけの余裕のある親がどれほどいるのか、と考えると何だか暗澹たる気持ちになる。結果、子供は盗んだバイクで走り出すしかなくなるんだろうなあ。
ベニー役ヘレナ・ベンゼルの演技に拍手!
期待度◎鑑賞後の満足度◎ 傑作だ。ベニーの目からは世界がどのように見えているのだろうとばかり気になった。ラストクレジットの歌はニーナ・ジモン作では?と思ったら当たりでした。
①まるでドキュメンタリーを見せられているような主演の女の子の演技が素晴らしい。
②「周りの人の善意と努力で良くなりました」「誰々とは心が通うようになりました」「社会に適応できるような良い子になりました」とかいったあまっちょろいヒューマンドラマにしなかったのか良かった。
③2019年製作の映画でベルリン(映画祭)で銀熊賞まで獲ったのに、日本では今年まで公開されなかったのは客が入りそうになかったからでしょうね。
確かに主人公の少女は共感を呼ぶようなキャラクターではないし(日本の様に同調圧力の強い社会では逆に言えば反感を招きそう)
④確かにベニーの様な子供が自分の家族ならもちろん自分の生活圏の中にいたとしたら、率直に言って何処かに閉じ込めておきたくなるだろう。
私の弟も統合失調症を患っていて一番酷かった時は突然殴られたり蹴られたり頭から水を掛けられたりしたので、ホント「死んでくれたら良いのに」と思ったし、精神病院に入った時は正直者ホッとした。
だから、母親のベニーに対する恐怖感も私にはよく分かる。
⑤でも本人は好きでやっている訳ではないのはわかっていたし、それはベニーも同じ。
どうしようもないのだ。
10歳の女の子にアンガーコントロールをしろなんて無理だし(大人でも難しいのに)。
しかし、秩序ある社会(システム)にどっては迷惑な存在であるのは間違いない。すぐ暴力を振るうのであれば尚更。
ソーシャルワーカーの人達や医師はみんな善意の人ばかりだし、みんな何とかベニーを社会に適応させようと努力する(言い方は悪いが調教しようとする)。
それは今後秩序ある社会の中で生きていくのなら、本人の為でもあるし社会のためでもある。
でも、調教出来ない動物がいるように、長期出来ない人間がいるかもしれない。
では、そういう人間にはどう対応したら良いのか?
システムにおけるバグのように除去する?
閉鎖病棟や精神病院に閉じ込める?隔離する?(昔なら座敷牢?)
本作も最後は欧州から隔離し南米という遠隔地に閉じ込める方法を選ばざるを得なくなる。
でも、その前にベニーは逃げ出す。走って走って飛び上がる、とベニーを閉じ込めようとする世界にヒビが入る(クラッシュする)…
⑥勿論、現実社会ではこんなことは起こらない。少女は拘束されてでも連れていかれるだろう。
人間は社会的生き物だとよく言われる。
私たちも社会の中で居場所を貰い、社会も私たちにその中で生きていく為の無言のルールを強いてくる。
たった一人で社会(誰か)のお世話にならずに生きていく能力も自信も勇気もないから、私たちは自ずと社会から弾き出されないように、弾き出されないまでも鼻つまみものにならないように、有る時は自分を殺し、自分を抑え、迎合し、生きている。
ベニーのように自分の思うまま、感じるままに振る舞い怒りわめき散らせたら、と思っても勿論、その後の事を考えると恐くて出来ない。
逆に、そういう人たちを見ると社会の秩序を乱すものとして眉をひそめ、酷い場合には排除しても仕方ないと思う。
飼い慣らされて生きていくか、飼い慣らされずに生きていくか…
まあ、そんなに深刻に考えることもないが、
答えは簡単には出ない。と言うか、答えは無いのだろう。
ただ、人間が社会的生き物であるのであれば、その社会に適応・適合するのが難しい或いはできない人間も引っ括めて私たちの生きる「社会」と見なすべきであろう。
この映画はその課題を我々に突き付けてくる。
システムには余白が必要だが、それを認めるとシステムでは無くなるというジレンマが存在する
2024.5.9 字幕 アップリンク京都
2019年のドイツ映画(125分、G)
攻撃的で手に負えない9歳の少女に振り回される大人たちを描いた社会派問題提起映画
監督&脚本はノラ・フィングシャイト
原題は『Systemsprenger』、英題は『System Crasher』で「攻撃的で乱暴なこども」を表す業界の隠語
物語の舞台はドイツのベルリン
幼少期にオムツを顔に押し当てられたベニー(ヘレナ・ゼンゲル)は、顔をさわられるとパニックになり、暴力的になって手に負えなくなる少女だった
母のビアンカ(リザ・ハーグマイスター)は愛情はあるものの、どう接して良いかわからずに福祉を頼っている
支援活動家のバファネ(ガブリエラ・マリア・シュマイデ)はベニーが安心して過ごせる施設を探すものの、どこでも問題を起こして追い出されてしまう
そこでバファネは、ボクシングジムでアンガーマネージメントを教えているミヒャ(アルブレヒト・シュッツ)に通行付添人を頼むことになり、何とか人並みに登校できないかと策を練ることになった
映画は、あるドキュメンタリーの撮影にて「システム・クラッシャー」なる言葉を知った監督が興味を持ち、その実態を描く作品になっている
また、ベニーの演技は多くの地域で高い評価を得ていて、演技なのかガチなのかわからないシーンも多く存在する
子ども同士の殴り合いの喧嘩などは本気で止めなければならないくらいで、ヤバいんじゃないの?というシーンが結構多い
ミヒャは「ベニーが問題を起こすたびに居場所がなくなること」を知っているのだが、ベニーはわかっていてもそれを制御できない
あらゆる検査をするものの、彼女に処方されるのは抗精神薬のリスパダールぐらいで、根本的な治療は行われていない
閉鎖病棟への入院も視野に入れているが、適応が13歳以上となっていて、ベニーに特例措置が出ることはないのである
システム・クラッシャーはベニーのことを指すのだが、映画を見ていると、システムを破壊するのは大人側のようにも思えてくる
特に母親の言動は最低の部類で、擁護のしようがないものがとても多い
一緒に住むと約束をして、翌日には反故にするし、別れを言わず、説明もせずに投げてしまう
全てを押し付けられるバファネが泣きたくなるのは、ベニーを想ってのものであり、未成年と親権という問題で過剰に守られている現状によって踏み込めないもどかしさというものもあるのだと感じた
いずれにせよ、かなり重たい内容で、ドキュメンタリーレベルの「演技」が展開される
ミヒャが距離を取れなくなるとか、それによって夫婦の関係がおかしくなるとか、関わるだけで目に見えない影響が多いのもリアルだった
このような問題は年々増えていく傾向にあって、このような行き場のない子どもを国としてどうするのかが問われている
最終的に諸外国へと投げる格好になっていて、「これで良いのか?ドイツ」というのが本作の真のメッセージなのだろう
聞こえの良い言葉で濁せても、所詮は国内ではどうにもできないと言っているのも同じなので、今後に向けての布石ができるのなら良い影響になったということになる
だが、本質的に解決は難しく、そこには未成年の親権問題が関わってくるので、ここまで放棄が進むのなら、親権剥奪まで話が進み、法的に解決できるようにならないと難しいように思えた
システムとは何を示すのか?
『魂』はあるものの制御不能。9歳の娘を恐れ怯えた母親は逃亡し、多くの人々が彼女に関わり社会的コストは莫大になるも、対処しようがない。お先真暗な状態で、日本では「月」という作品が生み出され、ドイツではこうなる。どちらにしろ、暗澹たる未来だ。
癇癪持ち。
医療関係者ではないので、はっきりはわからないけど癇癪持ち、ASD、、という事かな。
システムクラッシャーの主人公と周りで頑張るケアラー達の攻防、見ててかなり辛く抱きしめたくなる、そういう映画です。
演技という事を忘れて見入ってしまった。
担当者、施設、受け入れ家庭、ドライバー、ドイツのケアシステムがきちんと分業されていて、1人に負荷をかけない様にして継続的にケアする、手厚くて素晴らしい。(まあ、それでも持て余されてる主人公ではある)日本はどうなってるんだろう?ドライバーがアンガーコントロールしてるシーンで、彼女もいつか自分をコントロール出来る日が来るのだろうか?と思う。
バカ親の行動で無力感に苛まれるケアラー達も抱きしめたい。
主人公がまだ子供だから緩いが、大人になって行くと拘束や罰則がどんどんキツくなるというくだりが彼女の行く末を暗示していて悲しい。
どっぷり疲れた
後追い期、イヤイヤ期、第一次反抗期、中間反抗期、第二反抗期、諸々一気に来てもこんなに大変じゃない
日本の療育も結果が出ない子もいるし、
そういう性質の子だからアフリカに行っても変わらないと思ってしまう
そんな風にしか生きられない人がいる
ヴァルダの冬の旅のような未来しか見えない
柔らかな光の中、母に抱かれて幸せそうな笑みを浮かべるベニーが哀しい
ベニーと母どちらにとっても二度と戻らない美しい瞬間
扱ってる素材がムズいですねー
シンプルな構図と展開、時々差し込まれるイメージショットには混乱させられますがまぁそれが狙いの演出なんだと理解できましたし、分かりやすいストーリーだったので、自分はぐっと来ました。
とはいえ、扱っている事柄はかなり難しいと感じたので、面白いとか楽しいといった感情にはとてもなれません。むしろ深いに感じるところが多々あるし、嫌悪感を持つ人も多いかと─。
内容がムズいだけに、敢えてシンプルかつ分かりやすく作成されているような印象で、特に音楽なんかにそういった要素はふんだんに感じたので、捉えようによっては酷い内容なのかも─。最後のニーナ・シモンは最高なんですけどね。
個人的には演者の頑張りなんかも汲み取って、いいね!ってな感じです。
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