劇場公開日 2019年11月22日

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「今まで討ち入り費用はボランティアや手弁当でまかなったと思っていたけど、考えてみればそんなわけはない。」決算!忠臣蔵 Push6700さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5今まで討ち入り費用はボランティアや手弁当でまかなったと思っていたけど、考えてみればそんなわけはない。

2021年10月17日
PCから投稿

見る前は吉本興行が入っているし、お笑い映画なのだろうと思っていた。

でも見てみたら一応笑わせようとはしているけれども、金勘定で笑いをとろうというより、中身はすごく現実的な感じがした。

考えてみれば、今までの忠臣蔵のイメージは、ひたすらきれいでかっこいいイメージしかない。

だいたい大石内蔵助がすごい切れ者で、リーダーシップがあり、最初から討ち入りを目指している。

それを誤魔化すために、御家再興を図ったり、芸者と遊び惚けたりする。

家臣も最初は籠城だ、討ち入りだと威勢がいいけど、時がたつにつれ一人去り、二人去りして、どんどんいなくなる。

最後に残った本当の忠臣47人が討ち入りを決行、見事敵討ちを果たすが、それは認められず全員切腹となる。

という日本人が好きそうな切ないストーリーのものがほとんど。

あまりよく覚えていないけど、昔北野たけしさん主演のTVドラマで、自分の利益と保身ばかり考えて行動していたら、結果的に討ち入りになってしまったというような忠臣蔵もあったけど、あれも何か違うような気がした。

この『決算!忠臣蔵』は大石内蔵助がつけていた帳簿で、お金という面から忠臣蔵を描いている。

今までのイメージだと全部手弁当というか、自分達で何か働いて稼いだ金でやっているボランティア的なものだと思っていたけど、考えてみればそんな訳はない。

この映画では殿の奥方様が、商人に貸していたお金を、回収して預かったとなっているけど、結局取り潰しになった藩から持ち出したお金でやっていたらしい。

初めは御家再興を目指し、いろいろな工作資金や、家臣の生活費などに使っているんだけど、うまくいかず残金はどんどん減っていく。

その他いろいろあるんだけど、結局御家再興の望みがなくなり、どうしようもないので、かくなる上は討ち入りしようということになる。

この間、誰もこれといって働いている様子はないし、働いたら負けみたいな感じでやっている。

最後、討ち入りの血判状をもらっている仲間を江戸に連れていく金がなくなり、血判状を返し、連れていける人だけ連れて行き、江戸にいる仲間と合流して47人になる。

映画だとこの後武器や装備を買うお金や作戦で、またいろいろもめるんだけど、皆好き勝手なことを言ってまとまらず、やる気があるのかないのかよくわからない。

その結果、戦とはいえ全員鎖帷子を着込んで、籠手、脛当て、鉢金を巻いて、3人一組で敵一人に当たり、なおかつ敵が完全に寝ているであろうという時間を襲うという、超卑怯な作戦になる。

なんだか忠臣蔵というよりも、親が死んでしまった中高年のニートが、お金が無くなって生活していけなくなる前に、世間の人を殺して自分も死ぬか、死刑になろうということみたいな感じに思えた。

なんとなくコメディーだから笑って見ていられたけど、真面目な映画だったらとんでもないことになったような気がする。

でも実際の資料に基ずいているなら、夢はないけど案外実際はこんな感じだったかもしない。

Push6700