配信開始日 2018年12月21日

「ただならぬ緊張感」バード・ボックス シュウヘイさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ただならぬ緊張感

2020年7月22日
iPhoneアプリから投稿

超自然めいた正体不明の存在に命を脅かされる。近年似たような設定の作品が多い気がするが、話題だったため鑑賞。
冒頭からシーンが過去に切り替わり、多少間延びするかと思いきや意外なほど展開が早かった。瞬く間に街がパニックに陥り、雪崩のように死に飲み込まれていく描写が素晴らしい。
「それ」を見てしまった時の発作的な反応、瞳孔の変化など、ともすれば荒唐無稽とも言える設定が、細かな表現によって支えられている。
最重要器官である視界を奪われた状態でどう生き残るか。食糧を調達するために窓を覆った車に乗り、ナビを頼りに道を進むシーンなどは、心臓がすくむような没入感があった。視界に入ったら即終了という、理不尽すぎる設定ゆえの緊張感がいい。
サンドラブロックの演技も大変よかった。元々人付き合いが希薄そうな主人公。荒廃した世界に夢も希望も見出せず、家族という関係に踏み込めず、辛く当たったり争ってしまう描写などは、人物が実に丁寧に表現されていると感じた。
「それ」は一体なんなのか。考察の余地が残る作品だが、どこか憎めない極めてヒトらしい登場人物たちが印象深い作品だった。

shuhei