劇場公開日 2019年8月24日

  • 予告編を見る

「さまざまな要素を豪華につめこんだ総合芸術」ディリリとパリの時間旅行 モーパッサンさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0さまざまな要素を豪華につめこんだ総合芸術

2020年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

さまざまな要素を豪華につめこんだ総合芸術のようだった。扇の要になっているのは、フランスの内面的文化に対する自信であり、それを次世代に伝えようとする強い意志だ。日本のアニメの主人公は、粗野な言葉を使い、乱暴に(ときに反社会的とも言える)振る舞うのに対し、本作の登場人物たちのフランス語のなんと美しいこと。発音も明瞭で美しく、言葉遣いもきちんとしていて、フランス語のリスニング教材に使えそう。それに、ディリリの礼儀正しいこと。主人公たちの乱暴な振る舞いと言えば、三輪車で階段を駆け下りるくらい。上品さと自由奔放さとのバランスはこれくらいという作り手の意志を感じる。
 もうひとつの見どころは、芸術的遺産のリアルタイムを疑似体験できる点だ。「ジュラシックパーク」で、恐竜の研究者が、生きて動いている恐竜を見て、涙を流して感動するところがある。同じように、パブリックドメインとなった画家、彫刻家、作曲家たちが、創作し、会話するところを見られるなんて、感激だ。
 また、アニメで初めて見るシーンも新鮮だった。ひとつは縄跳び。すごいスピードで動きながらしなやかさを失わない縄の動きも驚きだし、縄がディリリの体の前に来たり後ろに回ったりするのがすごい。もう一つは、主人公たちがエレベータから降りるシーン。格子の向こう側を主人公たちが上昇し、歩くようすが格子の隙間から見える。実写なら当たり前だが、アニメでこれを見せようとすると、なかなか手間がかかるのではないかと思う。

モーパッサン