配信開始日 2018年10月10日

「耳を傾けるという事」7月22日 カメさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0耳を傾けるという事

2019年3月18日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

個人評価:4.2
映画「ウトヤ島、7月22日」では語られなかった犯人の素性や思想、そして事件後の裁判の終結までしっかりと描かれ、本作と映画を合わせて見ると非常に興味深い。
本作を通して感じる事は、それぞれの思想に耳を傾けるという事。ウトヤ島で姉妹を殺されながらも生還した移民の少女。ノルウェーに移民してきた心情を裁判で語る。傍聴する人達の描写が上手く、皆が少女の声に耳を傾けている。
もちろん犯人の強固に及んだ思想にも、耳を傾けねばならない。そしてビリヤルの屈指ない魂の声。
本作は事件そのものを描くにあたり、犯人の思想と、被害者のビリヤルの屈指ない強い姿勢とを対比させながら物語が進む。それにより単純な事件録とは違い、より事件の本質に迫っていると感じる。
最後の2人の描写。自身の思想を理解する人間はいない事実を突きつけられ、独房に入る犯人。そして死んでいった仲間達の無念な想いも重ね、消して屈指ない、負けていないと雪の山並みにたたずむビリヤル。
その2人を対比させ、事件の最後には失われた69人の若者の命と、空虚さだけが残る。

カメ