劇場公開日 2019年7月26日

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「沈める目的での“不沈艦”との視点は目新しかったが…」アルキメデスの大戦 KENZO一級建築士事務所さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0沈める目的での“不沈艦”との視点は目新しかったが…

2023年12月7日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

4年前にどこまで評判になっていたのか、
存在すら全く知らないでいた作品だったが、
新造艦を巡る戦艦派と空母派の争いの物語性
に惹かれて鑑賞した。

しかし、全体にマンガチックで
何らのリアリティの無さに戸惑いを感じつつ
の鑑賞となった。
・主人公が米国留学を破棄して
 山本らの依頼に応じることも、
・何の資料も無い中で建造費算出せよとの
 空母派の命令の設定も、
・時間の無い中、メジャーで戦艦の寸法を
 割り出そうとする行為も、
・過去の軍艦建造費が主人公の数式の通りに
 ピッタリと一致することも、
・暴かれた戦艦建造費のカラクリも
 敵を欺くためとのこじつけのような理屈が
 上層部の支持を一旦は取り付けられる
 会議の質も、
等々、
原作の設定なのかも知れないが、
底浅く安易でウケ狙いばかりの印象で、
それこそ全てがマンガチックに
感じてしまった。

ラストシーンでの、
大和は日本人の意識を目覚めさせるために
沈める目的での“不沈艦”との視点は
目新しかったが、
そんな造船中将の戦艦製造意図が
原作者の創作に過ぎないとしても、
吉田満著の「戦艦大和ノ最期」での
大和と運命を共にした海軍将校の言葉
「…日本は進歩ということを軽んじ過ぎた。
…敗れて目覚める、…技術の発展を軽んじた
…日本の新生にさきがけて散る。
まさに本望じゃないか」
との思索と比較して、
一見似ているようではあるが、
大和乗組員に対しては
裏切りそのものでもあるし、
組織のリーダーとしては
卑屈な精神の発露に過ぎず、
とても大和乗組員が残した
「戦艦大和ノ最期」が伝える
本当に祖国を愛する崇高な想い
と一緒に出来るものでは無かった。

KENZO一級建築士事務所