劇場公開日 2019年7月26日

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「数学で《戦艦大和》の建造を阻止しようとした男」アルキメデスの大戦 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0数学で《戦艦大和》の建造を阻止しようとした男

2023年1月5日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

数有る戦争映画の中でも、フィクション映画。
《戦艦大和の建造を止めようとした男》が、
主人公の映画です。
着眼点が鋭いです。
そして映画冒頭では、当時の国家予算の26%=15兆4000億円(今のお金に換算)を
掛けて日本が建造した《戦艦大和》が、アメリカ軍の空からの爆弾投下を受けて、
真っ黒は煙を上げて炎上して、船員は逃げ惑うシーンからはじまるのです。

《戦艦大和が爆撃で沈没す》

これは史実で多くの人が知る事実です。

そして遡ること12年前。

山本五十六海軍少将は、戦艦大和の建造に反対の立場でした。
5年後、10年後には、航空母艦(空母)から、飛行機を発射する航空戦が中心になる・・・
そう考えていました。
しかし海軍の主流は、戦艦大和の建造が既定路線。
そこで山本五十六は考えます。
「大和」の総建造予算が980億円。
この額には、嘘があり実際にはもっと多いのではないか?
それを証明したら、建造を阻む事が出来るかもしれない。
そこで目を付けられたのが、帝国大学の
若き天才数学者と呼ばれる櫂直(かいただし)でした。
櫂直は架空の人物です。
この映画はたられば=フィクション映画です。
もしも戦艦大和が建造されなかったら?
真珠湾攻撃がなされずに開戦しなかったら?
(事実、真珠湾攻撃は戦艦大和完成2ヶ月後・・・なのです)
歴史は大きく変わり、日本の未来はどうなっていたのでしょう?
(と、ここまでは行きません)

しかしご存知の通り、日本は開戦して泥沼の戦いをし、
敗戦して国民は310万人(内訳は軍人・軍属が230万人、民間人が80万人)
を失ってしまったのです。

この映画では、建造費を半額以下に見積もったことが、櫂の計算で
証明されるのです。
これで建造は中止か?
と思ったけれど、設計に携わった平山中将(田中泯)の大演説により、
建造のゴーサインは出されて、万事休す!!!
よって日本国は戦争への道へ一直線に進んでしまうのです。

フィクションでも《歴史を変える》ことの困難を感じます。

巻尺で全て測らなくては気の済まない変人・櫂直を菅田将暉が
リアルを感じさせつつコミカルな演技で、チャーミングです。
櫂に思いを寄せて、櫂が建造費の実際を計算する手助けする尾崎鏡子(浜辺美波)
明るさと健気さで、この映画に花を添えます。
櫂の秘書的役割で徐々に櫂を尊敬する田中(柄本佑)の好演とサポートも
見逃せません。
そして山本五十六役の舘ひろし。
真珠湾攻撃を主導したとされる重要人物。
舘ひろしだと策略家には見えない(良い人オーラが強くて、笑)

特殊な仮説から切り込んだ戦争映画の外伝。
とても興味深かったです。
「永遠の0」はさすがに観てまして、
その後、
「男たちの大和/YAMATG」を観て、
その時「大和」の乗組員がどんな目に遭ったかをツブサに見つめ、
「ミッドウェイ」を観た後で、知りたかったので、
日米合作映画「トラ・トラ・トラ!」を観ました。
その後、塚本晋也監督の「野火」も観て、
第二次世界大戦の開戦から、敗戦までを駆け足で追ったわけです。
今考えると、
日本の第二次世界大戦を象徴するもの。
人間では山本五十六であり、兵器ではゼロ戦と戦艦大和、
だと思います。
当時の軍隊の能力と知力と全霊を掛けた「戦艦大和」
それが兵隊たちを地獄の修羅場へ誘い、
やがて滅びのシンボルと化す
「戦艦大和」

あの時代、あの戦争とは、何だったのだろう?
それをこの映画は私たち日本人に問いかけています。

琥珀糖
Mさんのコメント
2023年1月9日

「戦艦大和ノ最期」という本があります。カタカナでとても取っつきにくいのですが、すごい作品です。機会があれば、ぜひどうぞ!

M
満塁本塁打さんのコメント
2023年1月7日

琥珀糖様。こちらこそ今後もよろしくお願いいたします🙇‍♂️。

満塁本塁打
みかずきさんのコメント
2023年1月7日

共感ありがとうございます。

本作、どんなに凄い知力を駆使しても戦争は止められないという、
やるせない気持になりました。
やはり、戦争を止められるのは我々一人一人の強い反戦の意志でしかないでしょう。そのためには、本作のような作品を観続けて、反戦の意志を継続することが大事だと思います。

それにしても、関連作品を鑑賞して十分な情報収集をしてから
本作を鑑賞した琥珀糖さんの鑑賞姿勢には映画愛を感じます。
敬意を表します。

では、また共感作で。

ー以上ー

みかずき
満塁本塁打さんのコメント
2023年1月7日

すみません、イイね押し忘れてました。🙇‍♂️

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2023年1月7日

返信お気遣いありがとうございました😊😭。もしお時間がありましたら、私の「映画版 太陽の子」コメント欄ご覧いただけると幸いです。ありがとうございました。😊

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2023年1月6日

1914→1917 でした。戦場に架けるは サイモン&ガーファンクルの明日に架ける橋🌉との取り違えで「かける橋」が正解のようです。すみません、お粗末様です。🙇‍♂️🙇‍♂️🙇‍♂️

満塁本塁打
満塁本塁打さんのコメント
2023年1月6日

「ゼロ、大和、トラ」「ミッドウェイ 1914、:両作とも好作品ですが客が不入」全て観てますが美化しすぎの気がします。【ちなみに私は保守右寄りです】本作も映画館で観ました。私にしては珍しく予備知識無しで臨んだもので、菅田将暉さんの大日本帝国軍人としては無理がある【ただし原作時点で長髪とのこと】長髪が気になって内容が入ってきませんでした。山本五十六はプライドが邪魔して【帝大出】とは組まないイメージでした。お爺さんの勝手な呟きで恐縮ですが、邦画では「二百三高地」洋画では「戦場に架ける橋」が極めて中立的で双方の立場から描かれていて、戦争の意味不条理さもキチンと描かれていて、良い作品だと思っています。😊😊

満塁本塁打
CBさんのコメント
2023年1月6日

永遠のゼロ、男たちの大和、ミッドウェイ、トラトラトラ、そして野火まで!!
すごいです。尊敬。

CB
みかずきさんのコメント
2023年1月5日

私の神の月レビューのコメント欄への、
アルキメデスの大戦コメントありがとうございます。
コメントの関連情報を以下に提供します。

最近は配信サービスなどが進化しています。
映画観賞は、劇場鑑賞派と自宅での配信サービス&オンデマンド利用派に分かれています。劇場で鑑賞だけが映画観賞ではないです。

御存じだと思いますが、こちらのサイトを含め、各サイトでレビュアーランキングを公表しています。鑑賞数、レビュー数、共感数、コメント数などの指標を総合的に判断してランキングしています。

先程、確認しましたが、琥珀糖さんの鑑賞/レビュー数は600件です。
私は225件です。

私は、映画好きの仲間と映画鑑賞のグループLINEを作っています。
仲間から話題作の鑑賞依頼を受けることが多いです。
なので、私の新作映画レビューには話題作が多いです。
話題作はレビュー投稿者、レビュー閲覧者が多いので、
確率的にレビュー共感数は多くなると推察します。

ー以上ー

みかずき
零式五二型さんのコメント
2023年1月5日

素晴らしい鑑賞履歴と本作とそれらの感想に大変共感いたします。
フォローありがとうございます

零式五二型
talismanさんのコメント
2023年1月5日

読み応えのあるレビュー!かなり前に見たのですっかり忘れていた内容も思い出せました、ありがとうございます!

talisman