劇場公開日 2019年3月22日

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「企画が」ソローキンの見た桜 マリーさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0企画が

2019年5月2日
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鑑賞方法:映画館

たしかにその後のソ連から日本が被った仕打ちを考えると、一方的に日本がロシアへしてあげた美談だけこうして切り取っても日本人として複雑な気持ちになるのは分かる。それだけ、日露関係・日ソ関係は複雑だと心得たほうがよい。
第一、日露首脳会談で安倍首相がプーチンにロシア人墓地の話をしたところで、プーチンの心は1ミリも領土問題解決へと動かせないのだから…。
それに比べポーランドはどうだろう。かの国では今でも、シベリア抑留孤児を助けたことを教科書に載せてある。ポーランドの日本本研究は世界で二番目に古く、ポーランドは日本語を勉強する人口はアジア地域以外では一番多い親日国家で、現に日本人とのハーフも意外と多い(土屋アンナ、加藤シルビア、藤田ニコルなど)。
当時ポーランドはロシアの支配下にあり、松山に収容されたロシア兵はポーランド人とロシア人がいて、むしろ投降したのは日本と戦う気のないポーランド人のほうが割合的に多かったのだから、ロシアよりポーランドと合作して映画を作るべきであったのではないか。日本はポーランド人とロシア人と分けて収容し、そのことは後々までポーランド政府から感謝された。またその決定に広田弘毅が大学生のときに関わったとして、東京裁判では彼の無罪を連合国側にポーランドは働きかけた。日本が国際法を遵守して捕虜に対して手厚く保護をしたことの証明はポーランドと日本との交流史でシンプルに伝わるし、映画ってそういうことを広める目的を持って作られてもいいと思う。
この映画にあるロシア人兵士と日本人看護師の恋愛沙汰が事実ではないことから、少しファンタジー要素が強すぎる感じがあった。そうなると、歴史的な史実を大事にしようとしている流れが少し勿体無いかな…。
付随して日本の当時の家父長制の悪い側面を強調しても、日本人の心にはあんまり響かないし、本当の感動も生まれない気がします。
ロシア革命に身を投じるのも、当時のロシアの社会的背景を描写しないとなかなか共感しにくいところでもあります。ただ日本はこれを影で支援してロシア帝国の転覆をはかろうとしたのは事実なので、ここのところを深く掘り下げて物語にもう少し細かく組み込んでも面白かったかもしれません。
以上を踏まえて、企画段階から練り直したらさらにいい映画になったと思います。

マリー