劇場公開日 2018年8月11日

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「パキスタン、インド分離の背景と、マウントバッテン卿が果たした役割が良く分かる歴史良作」英国総督 最後の家 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5パキスタン、インド分離の背景と、マウントバッテン卿が果たした役割が良く分かる歴史良作

2019年10月17日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

難しい

幸せ

 この映画は1947年、英国植民地だったインドが独立する過程をかなり忠実に描いている。(併せて、大英帝国の弱体化も仄かに臭わせている)

 独立前、ヒンドゥー教徒とシク教徒で構成される国民会議派とイスラム教徒を代表するムスリム連盟の闘いが激しくなっていく中で、歴史上に名を残すガンディー・ネール(インド単独独立を目指すが想いはやや異なる)、ジンナー(インドと別れてムスリムによるパキスタンの建国)の駆け引きが描かれる。

 が、この作品が優れているのは政治的駆け引きの結果、インドとパキスタンに分断されたあとのインド国民が直面した数々の悲劇に焦点を当てている点である。この辺りの詳細は余り知られていないからこそ、見所が多い映画である。

 宗教の違いから、思いを寄せる男女が引き裂かれるシーンをこの歴史的悲劇の象徴として描きつつ、マウントバッテン卿の苦悩も表現している。

 印象的だったのは、
 ・マウントバッテン卿の屋敷で働いていた使用人たちが、インドかパキスタンかを選ぶシーン
 ・チャーチルがインドとパキスタンの国境線を英国に有利になるように引くシーン
 ・その国境線の引き方の結果、長年住み慣れた土地から移住せざるを得なくなった人々(1400万人と言われている)の混乱と各地で起こった虐殺(100万人と言われている)

 私たちのすぐ近くの国でも、この数年後に同じ愚行が行われた結果、現代、何が起こっているか。又、インドとパキスタンの軋轢が今でも続いている事実を考えても、この映画は観る価値が十分ある。

 当時の人々の宗教、立場によって異なる衣装も美しく、当時の英国総督の家(現在は、インド大統領官邸:ここで撮影された)内の装飾も見応えがある。総合的な完成度が高い英国近代歴史映画の秀作である。

<2018年9月3日  劇場にて鑑賞>

NOBU