「心に残るは君の歌声」COLD WAR あの歌、2つの心 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
心に残るは君の歌声
2014年の『イーダ』でアカデミー外国語映画賞受賞、本作でカンヌ国際映画祭監督賞受賞、昨年度のアカデミー賞でも監督・撮影・外国語映画の3部門にノミネートされたポーランドのパヴェウ・パヴリコフスキ監督作。
自身の両親をモデルに、冷戦下のポーランドで出会った男女の愛を紡ぐ。
まず目を見張るは、その圧倒的なモノクロの映像美! これには陶酔させられ、溜め息が漏れてしまうほど。
映像技術が向上し、スーパークリアなカラー映像もいいが、時たま見るモノクロ映像にはどうしてこうも魅了されるのだろう。
音楽も本作の魅力の一つ。舞踏音楽、民族音楽、ジャズと見る者聞く者を虜にする歌声が響き渡る。
話の方は…
音楽家のヴィクトルと歌手を夢見るズーラ。
舞踏学校で出会い、恋に落ちる。
荒波のような時代。
激しく惹かれ合いながらも、ヴィクトルは亡命。ズーラは彼と別れ、歌手となる。
再会。再び激しい愛。また別れ…。
運命と時代に翻弄されていく…。
二人の愛は情熱的。
主演二人は名演。特にズーラ役のヨアンナ・クリークは素晴らしい歌声を披露し、モノクロ映像の中でもクラシカルな美貌が映える。
惹かれ合い、出会いと別れを繰り返す男女の姿は、邦画恋愛映画の最高峰『浮雲』を彷彿させる。
名画である事には間違いない。
後は好みの問題。
悪くはない。が、淡々とした作風、静かな展開、詩的でちょっと分かり難い点もあり、完全に入り込める事は出来なかった。88分がちと長く感じてしまったのも事実。
監督の格調高い演出、クラシカルな作風、美しい映像と音楽とヒロインだけでも。
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