劇場公開日 2018年10月12日

「概して清々しいノンストップ・バイオレンス・アクション」ムタフカズ 因果さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0概して清々しいノンストップ・バイオレンス・アクション

2023年7月17日
iPhoneアプリから投稿

南米の小国を舞台に繰り広げられる仁義なきバイオレンスアクション。ひたすら疾駆し続ける映像や入り組んでいるようで実は単純な物語はフランス的で、いっぽう過度に母性神話的な顛末や外連味控えめのリアルな所作にこだわり抜いたアニメーションは日本的といえる。両国の特徴(特長ではない)がいい塩梅に混じり合った良質な合作映画だと感じた。

とにかくサラッと見られるのがいい。ピタゴラスイッチのようにハイテンポに連鎖していくアクションとサスペンス。アニメーションならではの文法破りな演出(メタ字幕、タッチの大胆な転換)もほどよいスパイスとして機能していた。死のポップさもロバート・ロドリゲスあたりのメキシコ映画の楽しさを彷彿とさせる。

ただ終盤は物語にやや駆け足の感があり、それゆえ視覚的快楽がところどころ寸断されてしまっていた。ルナに過剰な意味づけをしてしまったのは完全に悪手だったと思う。一旦セクシュアルな対象として提示したものに母親像をダブらせるというのはかなりグロい。そしてそのグロさが速度を殺している。だったら最初から最後まで目的不明のファム・ファタールとして浮遊させておくほうがよかった。

結局ナチョスが何だったのか、リノはなぜ冬を乗り越えることができたのか、それらにろくすっぽ説明もないまま終わる投げやりさはリファレンス元であるジョン・カーペンター『ゼイリブ』を踏襲していて清々しい。しかしその清々しさを自ら顕示するようなラストシーン(月面に設置されたナチョスの基地から大量のUFOが放出される)は正直なくてももよかったんじゃないかと思う。

因果