劇場公開日 2017年7月15日

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「黒沢明のストーリーテリングは伝説らしいよ」パトリオット・ウォー ナチス戦車部隊に挑んだ28人 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5黒沢明のストーリーテリングは伝説らしいよ

2024年2月6日
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鑑賞方法:DVD/BD

前半は戦闘のための準備と、兵士同士で冗談を言い合っている。冗談の中に今の状況やメッセージなどをさりげなく忍ばせているのが良かったね。

日本の戦士が七人で野盗から村を守る「七人の侍」の話では「日本の戦士は何てったかな?」「サムライか?」「違う。日本だぞ」って、いやいや一応サムライで合ってるだろ。とか。
続いてアメリカのカウボーイ(牛飼い)が同じように戦う「荒野の七人」の話で、自分の村の牛飼いは子どもだとか。
更に歴史書に載っているペルシア戦争の話、映画でいうなら「300」だね。
どれも少人数で大人数を迎え撃つ戦いのことで、これから起こる戦いを暗示すると同時に、キャラクター同士の会話が冗談になっている。
その冗談は観ている私たちに対して違った冗談になっている所が面白いよね。

どれも映画作品名は出ない。この作品の戦いよりも「七人の侍」の方が後なので、もちろん映画的な遊び心なんだけど、ロシアではこんなに遠回しな言い方で観客が作品を理解するほど映画が盛んなのかなとちょっと羨ましくなった。多分、日本では気付かない人の方が多いだろうから。

あとは、見た目がロシア人っぽくない兵士が何人かいて不思議に思っていたのだけれど、この部隊はガザフスタン人が多くいたそうで、その流れかどうかわからないけど、民族の話や国の話なんかも兵士の冗談の中で私たちに情報を教えてくれる。

後半は一転してほとんど戦闘描写。冗談もほぼなし。
何台も登場するドイツ戦車は恐怖を煽ったし、爆撃、銃撃などの迫力は充分で、ちょっと違う話だけど、デジタル撮影の映画ってスゴいなと感心してしまった。
クライマックスは、ドイツ軍が撤退するのが先かロシア兵が全滅するのが先かというギリギリの緊張感が堪らなく良かったね。ちょっとわざとらしく映画的過ぎたとしても、伝説レベルの逸話には尾ヒレがつくものだからね。

それと、生きて帰ってこそ英雄だという言葉は、ありきたりそうで実はあまり聞いたことがない、特に戦争映画では珍しいと思った。普通は戦死した人の方をたたえるもんね。
死んだ者は役目を果たせず無責任で生き残れば英雄というのは、すごくロシア的な考え方なのか、この映画のための言葉なのか判断するためにも違うロシアの戦争映画も観たくなった。

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つとみ