劇場公開日 2017年6月16日

「権威主義を皮肉った、変人・山田孝之のファンムービー」映画 山田孝之3D Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0権威主義を皮肉った、変人・山田孝之のファンムービー

2017年6月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

知的

"カンヌ映画祭正式応募作品"という、要するに、"応募しただけ"の看板を掲げてはいるが、マジな作品だと思って観るといけない。本編(テレビドラマ)からも完全にスピンオフしており、どちらかというと"山田孝之ファンムービー"として捉えたほうが心が落ち着くかも。

もともと、テレビ東京で放送されたモキュメンタリーで、俳優・山田孝之がプロデューサーとしてカンヌ国際映画祭での受賞を目指すという、架空設定の番組「山田孝之のカンヌ映画祭」。この番組の番外編的に作られた。

本来は、自分で決められない日本人の権威依存(カンヌ至上主義)を皮肉っている。「穢の森(La forêt de l'impureté)」(けがれのもり)という、カンヌグランプリの「殯の森」(2007)をモジったタイトルの作品を作る予定で、山下敦弘監督のメガホンと主演女優の芦田愛菜までは決まっていたが、なるべくして頓挫している。

そういう意味で最後までオトナの愚行に付き合ってくれた才女・芦田愛菜を称賛する。

結局、"合同会社カンヌ"という、これまたヒトを小バカにしたような自主制作プロダクション名だけ残った。その"合同会社カンヌ"のオープニングロゴが流れる3D映画が本作「映画 山田孝之 3D」である。

内容は、幼少期から初恋、問題のあった家庭環境など…山田孝之の生い立ちと、俳優として17年の半生を本人が語る。山下敦弘監督がインタビュアーとなって構成される、"Interview with 山田孝之"である。こんなはずじゃなかったかもしれない。

しかし、まるで深夜ラジオのしゃべりのようなもので、自虐的な回想と自己分析はそこそこ笑える。仮にラジオの"山田孝之のオールナイトニッポン"だとして、ファンなら大丈夫。山田孝之的な空間を共有できる。

さらに、ただひとり掛けイスに座って語る山田孝之だけでは絵柄がつまらないので、クロマキー (chroma-key)合成を使って、3D背景で遊んじゃおうという趣向である。映像的な企みとしては、漫☆画太郎のマンガと実写の山田孝之のカラミが面白い。

絵柄を華やかにする以外に、3D制作に意図するところはないとは思うが、実は日本映画として、ひさびさの実写版3Dだったりする。

カンヌ至上主義を皮肉るだけでなく、"山崎貴監督"と"CGアニメ"を除いて、誰も3Dを作らない日本映画界の挑戦力のなさや、経営陣の決断力のなさを指摘しているとしたら、相当ブラックジョークが効いている。

個人的には、この身を蓋もないパッケージは、結構好きである。普通の人には薦められないが、鑑賞ポイントが6ポイントあれば、¥300(3D追加料金)を足すだけなので、山田孝之ファンと、ヒマでミーハーな人はどうぞ。

(2017/6/18/ TOHOシネマズ新宿/シネスコ)

Naguy