配信開始日 2016年11月18日

「【アメリカ西部の貧困問題を先住民族問題を微妙に絡めながら、西部劇スタイルで描き出す。現代アメリカの問題を鋭く抉り出す、テイラー・シェリダンの辣腕に驚く。】」最後の追跡 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5【アメリカ西部の貧困問題を先住民族問題を微妙に絡めながら、西部劇スタイルで描き出す。現代アメリカの問題を鋭く抉り出す、テイラー・シェリダンの辣腕に驚く。】

2020年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

知的

難しい

ー冒頭、寂れたテキサスの田舎町の壁に殴り書きしてある”イラクに3度行っても、見返りなし”という言葉が印象的である。-

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 タナー(ベン・フォスター)とトビー(クリス・パイン)のハワード兄弟は小さな銀行ばかりを狙って、銀行強盗を繰り返す。但し、奪うのは少額紙幣のみ。スマートなやり方である。
 兄弟の過去の事情も劇中、二人の台詞から分かって来る。

 彼らが奪った金を信託で預ける銀行の男の言葉も辛辣に響く。
 ”貴方達の両親が困っている時に、金を貸さなかった銀行から金を取り立てて、家族のために信託投資をするのだから、問題はないでしょう・・。”

 又、ハワード兄弟を追う、老練のレンジャー、マーカス(ジェフ・ブリッジス)と相棒アルベルトの関係の設定も絶妙である。マーカスは生粋の白人。アルベルトは先住民族の血を引いている。マーカスはそれを揶揄い気味にアルベルトに話すが、彼はきっぱりと、
 ”150年前、ここは私の先祖の土地だった・・。”と言い切る。笑う、マーカス。

 そして、大きな銀行を襲い、人を殺めたトビーは負傷したタナーを逃がし、一人で、自警団及びレンジャーたちに立ち向かう。そして、アルベルトは死亡する・・。
 トビーが、高台の意思に座って、”草原の支配者、それは俺だ・・”と、嬉しそうに叫んだ彼を、ライフルで撃ち殺すマーカスの姿。
ー草原の支配者はお前ではない・・。-

 タナーが離婚した妻と息子二人に贈与した、石油が出る牧場の手伝いをしている時に、マーカスが訪れ、二人で話すシーンは今作の白眉であろう。

<見放された土地と人々の姿を鮮烈に描くテイリー・シェリダン。彼が今作を着想として、「ウインド・リバー」を制作した事が良く分かる作品でもある。>

NOBU
KEIさんのコメント
2022年5月5日

NOBUさん、それは知りませんでした。有難うございます😊コツコツとした企業努力と積み重ねなんですね。

KEI