劇場公開日 2017年10月6日

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「ぼくは石ころ」エルネスト kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ぼくは石ころ

2018年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

日本とキューバの合作映画だ。キューバ映画というのも珍しいので、合作ではあるが、最近観たことがあるといえば『ゾンビ革命-フアン・オブ・ザ・デッド-』くらいだ。

 映画のオープニングはチェ・ゲバラが1959年にキューバの使節団として日本を訪れるシーン。「見たいところに行く」と、予定を変更して広島へと向った一行。原爆ドームや原爆資料館を訪れて、「君たちはアメリカにこんな酷い目に遭わされて、どうしてアメリカの言いなりになるんだ」と感想をもらす。また慰霊碑にある「安らかに眠ってください 過ちは繰り返しませぬから」の言葉に対して「なぜ主語がないんだ」と問う。もう反米の思想が突き刺さるように訴えられてくる。

 1962年、キューバに医学生として留学したボリビアの日系人、フレディ前村(オダギリジョー)は入学5日目にしてキューバ危機の現実を知らされる。そして留学生たちもいきなり、銃の訓練を受けることになるのだ。もっともキューバ危機なんて史実もアメリカ主体で描かれた映画は多いけれども、キューバから見ればアメリカとソ連が勝手に牽制し合った末に起こったもので、いい迷惑だったのだと、この作品は教えてくれる。キューバ人がケネディを嫌いになるのも無理はない。フィデル・カストロにしてもミサイルを発射するわけはないので、チェ・ゲバラ同様、反核の意思を貫いている。

 1964年、フレディの母国ボリビアで軍事クーデターが起こったニュースが飛び込んできた。居ても立っても居られない彼は、“革命支援隊”に加わることを決意する。奨学金をもらっているので簡単には退学することはできなかったが、インターンの資格を取り、ゲバラから直接司令官室に呼ばれる。そこで戦地での戦士名エルネスト・メディコを与えられるのだ。戦地では決して本名を語らず戦士名で呼び合う。本名を語るのは死を覚悟したときだけなのだ。

 フレディの伝記映画として作られたものではあるが、むしろ淡々と描かれているために、むしろメインではないチェ・ゲバラを浮き上がらせてような気がする。フレディが処刑されるのは幼なじみの弟によってという皮肉もあるが、これは脚色なのだろう。そのおかげで米主導で軍事政権を樹立したボリビアの悲哀が伝わってくる。

kossy