「草壁先生の想いとラストシーンの解釈」ハルチカ ねいんとさんの映画レビュー(ネタバレ)

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ハルチカ

劇場公開日 2017年3月4日
全57件中、26件目を表示
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草壁先生の想いとラストシーンの解釈 ネタバレ

※本文にネタバレがあります。 [ ▼クリックして本文を読む ]

物語のテーマと直結する草壁先生の想いと、よく話題に上がり物議をかもしているラストシーンについて、自分なりの考えがまとまったので記します。

まず草壁先生の想いについて。
音楽室で草壁先生の楽譜を見つけたチカが涙を流すシーンについて、このシーンでは楽譜は何冊もあり、何度も書き直されたことがわかります。『soloは1人という意味じゃない』『ゆっくり 焦らないで』と記述があることから、初心者のチカにあえてソロパートを担当させる構成にしていったこと、1人で皆に追いつこうと苦悩するのではなくその壁を仲間と共に乗り越えること、そしてその大切さを草壁先生が「音楽」を通して伝えようとしていたこと、をこの時チカは知ります。
(この草壁先生の想いは保健室でハルタに「言葉」で伝えようとしたメッセージと同じ。)

そして、この曲がチカが入部してから程なく完成したことから、草壁先生はチカが部員集めに奔走する姿を見守りつつ、まだ廃部になる可能性が高い中で吹奏楽部の再生をただ信じて、ずっと曲を書き続けていたと考えられます。
書き直された楽譜を見て初めて、口には出さずとも最初から自分を信じてくれていた先生の想いを知り、チカは涙を流した。

また部の存続が確定する前から、フルートを練習していたチカのためにフルートのソロパートを用意していたことから『春の光、夏の風』という曲自体彼らのため(チカを中心とした吹奏楽部のため)に作られた曲であり、「部員」と「吹奏楽部」の関係性を「楽器」と「曲」という構成として組み込み、部を再生させたハルタとチカのソロパートの成功を持って曲(=吹奏楽部)が完成する、という構成にした。

また草壁先生がハルタに「言葉」で、チカには「音楽」で伝えようとした「仲間となら乗り越えられる」というメッセージはラストシークエンスにそのまま直結しており、この映画のテーマにもなっています。
ハルタにだけ「言葉」で直接メッセージを伝えたのは、ハルタがいつもチカの側にいる存在であり、チカを見守る存在であることに気づいているからです。
その想いを知ったハルタだからこそ、草壁先生の想いに涙を流すチカにそっと無言でハンカチを差し出すシーンに優しさと力強さが感じられるようになっている。
また本編では語られませんが、壁にぶち当たり音楽家の道を断念したという過去を持つ草壁先生から、その重要なテーマが語られることの意味を考えた時、ここに、草壁先生→ハルタ→チカ、という想い(テーマ)の伝承関係が見えてきます。
それにより迎えるラストの合奏シーン。
そこには音楽と優しく見守る眼差しだけがあり、それが逆にメッセージ性を高め、より一層の感動とテーマ性が伝わるシーンとなっている。
素晴らしいです。

そして最後のキャスト全員で踊り狂うシーンについてはふざけてるのか?という意見をよく聞きますが、当たらずとも遠からず。
あれはミュージカルというより主役の2人と草壁先生以外のキャスト全員(それこそ校内の教員、生徒含めて全員)が演技から離れ、打ち上げに興じているというメタ的な表現のように思えます。
校内各所にあったはずの楽器が瞬時に全て中庭に並べられ、部員達も3人を残して中庭に出てきて騒いでいるというのも、不自然で明らかに意図的。

校内上空にいる3人だけはまだ物語の中にいて、それ以外の中庭にいる物語を終えた出演者たちが、メタ視点でチカの演奏よって紡がれた物語の完成を祝っている。
ある種2つの違う次元にまたがる合奏を、同じ映画の中の1つのシーンで「音」を通じて同時にやってしまうという…恐ろしく意欲的なラスト。

これは原作者から言われた「主人公2人と草壁先生の3人を出したらあとは何をしてもいい」という要望に対する、監督なりの回答とも取れます。
そして最後には草壁先生も物語を終え、主人公ハルタとチカの2人だけのカットとなり「ハルチカ」として物語は完結する。

映画全般にわたり言葉は可能な限り省略され、音や情景、表情や仕草によってのみ意図的に演出される登場人物達の心の葛藤が物語の随所に散りばめられている。
それら全てがラストの1点に向かって集約され、草壁先生が作り上げた曲=吹奏楽部の完成という形をもって、映画として完成するという構造になっている。

こんな女子中高生向けの映画にここまで作家性全開でぶち込んでくる監督は正直バカです、が嫌いではないです。オススメです。

ねいんと
さん / 2017年3月8日 / スマートフォンから投稿
  • 評価: 4.5
  • 印象:  泣ける 楽しい 興奮
  • 鑑賞方法:映画館
  • コメントする (コメント数 2 件)
  • 共感した! (共感した人 1 件)

>kamisama さん
どーもありがとうございます。
この映画はラストシーンが最高ですね。
kamisamaさんの他映画のレビューも参考にさせてもらいます。

ねいんとさんのコメント
投稿日:2017年3月19日
ねいんと
kamisama
kamisamaさんのコメント
投稿日:2017年3月15日

激しく同意します。

ちょっと、ねいんとさんとは仲良くなりたいですね。

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