劇場公開日 2016年11月19日

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「ここまでしてこそ、将棋に命を懸けた、って言えるのだな。」聖の青春 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ここまでしてこそ、将棋に命を懸けた、って言えるのだな。

2017年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

松山ケンイチ演じる聖が、あまりにも可愛げがない。なのに、周りの仲間が彼をいろいろと援助するのだ。なぜならば、彼がまさしく命を削って将棋に生きていることを知っているからだ。
付き添いの看護婦が、長時間の対局は身体にさわるよと責めても、師匠たちは意に介さない。それどころか軽く笑い返している。もう、この場面で泣けてしょうがなかった。聖が、将棋のために命を懸けていることをよくわかっているからだ。だから、思う存分羽生と戦えることが聖の本望なのだと知っているからこそ、やりたいようにさせているのだ。
そのライバル、羽生役の東出の立ち振る舞いがまたなんともいい。ヒールにならず、お互いがリスペクトしあってる空気に満ちていた。彼がいたからこそ、聖の人生が輝いたのだと思う。だから、「さっきまで羽生さんがいらっしゃっていたんですよ」にも泣かされてしまった。
注文を付けるとすれば、聖の将棋の強さがあまり伝わってこなかった。たとえば対局の中で、その一手がどうすごいのかを表現できなかったか?
とはいえ、対局の雰囲気はいい緊張感だった。極力、音楽や効果音を入れないでくれたおかげで、駒を置く「パチン」というが活きていた。

栗太郎