劇場公開日 2016年10月29日

「concussion=脳震盪」コンカッション 葵須さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5concussion=脳震盪

2021年7月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

最近読んでいた地動説をめぐる科学による真理究明を目指す個人と自己の存在基盤たる天動説を守るために邪教たる地動説信者を弾圧する宗教の戦いを描いた漫画「チ。―地球の運動について―」に通じるものがあると視聴しながら思った。ストーリはフットボール選手の謎の死が発端で、その原因究明にあたるウィル・スミス扮する医師ベネット・オマルが原因を特定し、その真理に対してフットボールの協会が組織を守るために圧をかけてきてそれに抗う戦いという形でとてもコンパクトにまとまった作品。そのため、登場人物の人柄についてはウィル・スミスと彼の奥さんくらいしか深堀りされていない(別にそれが物語を損なうようには感じなかった)。視聴中に自己繁栄のためなら現場で活躍する選手たちの今まで解明されなかった病気を黙殺し、その病気をつきつけてきた医師も黙殺しようとする組織への憎悪の炎が自分の中でも湧いているのを感じた。ベネット・オマルという名前は「知識をもて、そしてそれを示せ」という意味らしいのも気に入った。悲しい物語を紡ぐ糸は偶然に紡がれたものではないのだと心に留めたい。万人にオススメしたい。

葵須