劇場公開日 2017年1月28日

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「デキ婚、いいじゃないか、ご縁と思えば。「偽善」と「優しさ」の違い。」恋妻家宮本 xmasrose3105さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5デキ婚、いいじゃないか、ご縁と思えば。「偽善」と「優しさ」の違い。

2021年10月28日
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遊川脚本のドラマ、大好きです。深いテーマを深刻じゃなく、面白く。いつも凄いなあと見ていました。

上っ面のドラマでなく人間の芯をテーマに据える。映画はどうなのか、期待しながら観ました。

有り体で言えば「デキ婚」で結婚した熟年夫婦27年目の危機。子が独立した後の「空の巣」での距離感。

二人は凄く気が合うとか、大恋愛の末「愛してます!」と結婚したわけではない。
男は、やっぱり責任上というか。
女も、堕ろさなきゃだろうなと思いつつ、結婚してもらえることになり、ホッとした。正直就職も不安だったから(その後専業主婦に)。だからお互い何となく、相手にも自分にも少し腰の引けた感じはある。だから気を遣う。踏み込まない。相手を醒めた目で見つつ、人として優しくあることは自分に課してきた。

あえて描かれることが少ないテーマですが、誰しも身近な、それでいて向き合えない暗部というか、身につまされる、曖昧なまま触れたくないところを、そっと開いてそっと閉じるような作品。
ここを捉えるなんて、さすが。

ただ。
あれ〜?なぜ映画にみえないの?
絵が、映画じゃなくテレビドラマなのか?
映画にこんなこと感じたのは初めてです。

でもじゃあ映画とテレビドラマの違いって、何?
カット割り?編集のせい?

遊川さんの脚本大好きなのですが、今回初めて、映像と編集の大事さに気付かされました。
何というか、拡がりがないのです。

映画とテレビドラマって、撮り方が違うの?と初めて素人ながら疑問に思い、調べたら(『教えて!goo』の「邦画のカメラワークがつまらないのは何故?」(2012/05/09)という質問へのベストアンサー、isoiso0423さんの回答をぜひ)

そうか、カメラもたくさん必要になるし、となると予算もいるのか。

でも、必ずしもお金じゃない。
カットが多ければいいわけじゃないし、
セリフや演技次第でもない。
俳優さんの力量だけで、全てテーマを語ろうとすると、
こぢんまり感が出てしまう。

「間」。
マ、もいるのではないか。
心情を代弁する間。なにも語らない間。
言葉はいらない。
そのために映像がある。
テレビドラマは「ながら」で見るので、無声の映像だけを延々とは流せない。でも映画なら。
そうするのが必要なら、映像だけでいい。

必要とされる生きがい、を妻にセリフで説明的に語らせるより、福島の風景や光、海風、地元の人やボランティアや、瞬間の表情とかがあれば...
教師宮本と生徒、その家族の関わりも。
おどける少年は正し過ぎる祖母に対し、偽悪的にピエロ役を演じながら、必死で母を援護し家族の崩壊を食い止めんとしています。

言葉じゃなく。何か別の映像で。
それこそ、正しさでなく、何かが伝わったかも。

語り尽くさない。余韻。残響。
今回はわたし自身が、自分が映画の何に魅かれていたのか、何を映画らしさと思っているのか、思いがけず知ることができました。
でも遊川さんにはまた頑張ってほしい!次回作品、引き続き応援したいと思います。

xmasrose3105