ドリーム ホーム 99%を操る男たちのレビュー・感想・評価
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家とアイデンティティー
個人評価:3.7
マイホーム。それは自身のアイデンティティーと同義である事がかわる。
現在では所有しない事がトレンドで、物はシェアする時代に突入しているが、一方では家という場所が、まるで自分そのものかの様に感じる人達も存在する。
リーマン・ショック後の個人のアイデンティティーが問われる物語だった。
また、マイケル・シャノンの演技が渋く味わい深い。
夢のマイホームと言うけれど、その夢の為に人は…
度々映画の題材になるくらい、リーマンショックはどれほどアメリカ社会に影響を与えたか。
しかし世界的金融危機と言われても、遠い異国の金融界で、尚且つお金の動きに疎い者にとってはピンと来ない。『マネー・ショート』もちんぷんかんぷんだった。
金融業界やその世界に携わる人たちを描いても分からない。が、我々と同じ一般市民の立場だったら…。
本作で描かれている事はリーマンショック後の波状効果かもしれないが、そもそものリーマンショックの原因が住宅市場の悪化らしいので、あながち間接的でもないかもしれない。
実話に基づく。
リーマンショックによる不況で失職したナッシュ。
母と幼い息子と持ち家で3人暮らし。
懸命に仕事を探すも、当ては無く…。住宅ローンも滞りがち。
それでも猶予があったが、事態は急転。
不動産ブローカーのカーバーにより立ち退きさせられる事に…。
この立ち退きシーンが悲痛。
要は突然ブローカーが警察とやって来て、「出ていけ」。
裁判所の書類を持ち合わせ、完全に法を盾にし、なす術も無い。
必死に抵抗・訴えるも、これはもう決定事項。
住み慣れ、思い出が詰まった我が家が奪われる。
しかも、ほんの数分で必要なものを揃えて即刻立ち去れ。
そんな数分で準備出来るもんじゃない。何という無情さ…。
真っ昼間、近所の人たちが見ている前で…。
家を追い出され、家具も運び出され…。
生き地獄。
いくらローンが滞り、法とは言え、執行した側は人の感情があるのか…?
もし、自分がその身になったら…? いや、なってみろ。
が、一切同情も感情も表さないカーバー。
彼は人間なのか…?
立ち退いたナッシュと家族はモーテル暮らし。
ショックだが、生活していかなければならない。
立ち退きの時に仕事道具を紛失し、カーバーが雇った業者が盗んだに違いないとカーバーの会社に詰め寄る。
しかし、これがきっかけで…。
カーバーから仕事を与えられる。
誰かが立ち退いた空き家の掃除。中は文字通りのク○まみれ。
思っていた以上の報酬。
母も息子も大喜び。
以来、カーバーの下で働く事に。
この時の心情ってどんなものなのだろう。
雇い主は自分の家を奪った憎い相手。
そんな奴から仕事と金を貰う。
複雑だろう。
が、母と息子、生活には変えられない。
相手には罪滅ぼしと思って貰おう。
無論カーバーは微塵もそう思っておらず、なかなか使える奴と仕事を振る。
ナッシュに目的が出来た。
家を取り戻す。
カーバーの下で働き、カーバーに金を返していく。
そんなカーバーから正式に雇われる。
それはつまり…
貧しい人たちから家を立ち退かす側になる。
皮肉な話だ。ほんの少し前までは立ち退かされる側だったのに、奇妙な成り行きで自分が立ち退かす側に。
立ち退かした人たちは、自分と同じ境遇。
面と向かうのも、勧告をするのも、実際に立ち退かさせるのも、心苦しい。
相手から容赦ない言葉を浴びせられる。人でなし!
自分もそうだったから故に、板挟み。仕事ではあるが、立ち退きを勧告した人たちにかつての自分を重ねる…。
カーバーからは甘いと苦言。
これが自分の望みなのか…?
しかし、報酬は素晴らしい。
世の中って不条理。仕事も金も無くて苦しんでいる人たちもいれば、易々と大金を稼ぐ者もいる。
ずっと前者として生きてきた。なのに、一転して後者へ。
勿論それは真っ当な仕事ではなく。
だが、大金が稼げる。夢でしか見た事のない大金を。
それは自分を麻痺させていく。
元の持ち家どころか、豪邸も買える。
豪邸を買い、母と息子を連れていく。
ところが…
母と息子は拒否。
仕事内容を知って、批判。
私たちを苦しめた仕打ちを、自分で見知らぬ人に課すなんて。
仕事と大金と豪邸と引き換えに失ったものは…。
あまりにも大きく、痛かった。
そんな時カーバーから、完全違法の仕事を任される。
しかも相手は、知人。
それに手を染めてしまう…。
家を奪われた知人は逆上し、事件を起こす。
そうさせたのは、自分。
善悪の狭間で揺れ動き、ナッシュが取った行動は…。
アンドリュー・ガーフィールドの熱演光るが、マイケル・シャノンがやはり巧い。
このクセ者ぶり、狡猾な憎々しさ。どんな役もハマるが、憎まれ役をやったら当代ピカイチ!
社会派題材を見る者にも比較的分かり易く、サスペンスを絡めた演出や脚本が見事。
ミイラ取りがミイラに…ならぬ家を取られた者が家取りに。
ラストのナッシュの行動には救いを感じたが、この闇落ちが実話だという事に驚かされる。
一体、何をどう間違ったのか…?
己の弱さか…?
それとも、
世界的金融危機から始まった不況の煽りか…?
大金を手にした代償はあまりにもデカすぎた!
アンドリュー・ガーフィルドさんが出ていてビックリ!
リーマンショックにより、家を立ち退かなければならなくなった男の物語。
理不尽な立ち退きに、異議申し立てても不動産屋は「我関せず」というと感じ…。
家を買っても職を突然失ってローンが払えずに、途方にくれる人々の姿に唖然としてしまいます。
立ち退きを要求する社長の汚いやり方に納得がいかないながらも、「金」の為に仕事に邁進する彼ですが、結局信頼していた人々がみんな離れてしまい、ひとりぼっちになってしまうのでした。
金を得た代償により、大切な人達を見失った男の悲劇でした。
アメリカは勝者の勝者による勝者のための国なのだ
サブプライムローンの話かと思ったらそうではなかった。もっと質の悪い詐欺、泥棒。
鍵と金の仕組みが?
スパイダーマンの彼よりマイケル・シャノンをみる映画。
ニュースの真相。
夢のマイホームを手に入れた人たちが、サブプライムローンの崩壊により大切なものと離れ離れになる様相を描いたドキュメンタリー。
不動産ブローカー(追い出し屋)を演じたマイケル・シャノンの非情なやり口と、家を手放さざるを得ない一家の混迷、迷走ぶりに胸が痛くなりました。
日本ではあまり報じられなかった米現地の様子を知ることができる教材的作品。
マネー・ショートの解りやすい版
テーマは様々でもアリがちな社会派サスペンスで意外性も無く想像出来る話展開。
結局、家は取り戻せず家族も離れていく。
最後にお決まりの正義感を発揮で主人公の甘さに共感も出来ない。
弱肉強食な世界で知恵があって悪ドイ事もこなせる人間が強いのだろう。
さすがに急に家から出て行けと不法侵入呼ばわりされたらたまったもんじゃない。
正義感と正しい選択に退屈なオチ。
ラストのもって行き方だけが残念。
リーマンショックの裏で、何がアメリカに起きたのかを切り取った一本。
立場・視点は違えど『マネー・ショート』の兄弟のような立ち位置で、こちらのほうが身近でさらに下衆くてエゲツ無いのが心地よかった。
どんな状況でも「勝つ奴は勝つ」、弱肉強食の絶対的法則。
法を逆手に取った人食い鮫の進撃は、見ていて分かり易い分『マネー・ショート』よりも勉強になるかもしれない。
いつもながらの「顔力大王」マイケル・シャノンに、ヒョロリとした頼りなさが魅力の元スパイディ。
主演の二人の演技も真に迫っており、まさにアテ書きのようで良かった。
のだが。
ラストの運びだけが残念だと思ってしまったのだけが悔しい作品。
暴走トラックが最後だけ赤信号で止まるってのは、やはり粋じゃないよ。
興味深い内容だった。
もっともっとシビアな事が実際にはあったんだろうな。銀行がどうとか言い訳はたくさんあるだろうけど、そもそも借りたものを返してないからでしょ。追い出した人が悪者にされるんだよね~。結構、冷静に観賞してました。
よかった
制度を逆手にとって裏をかいて金を設けるところは地味だけどハラハラして面白かった。また大工のスキルで不動産業界で出世してくところもよかった。主人公が被害者から泥に手を突っ込む加害者になっていくところに人生のままならしさや悲哀を感じた。
全く退屈せずけっこう面白かったけど、深い感動などはなく期待していたほど心に残らなかった。
悪徳商法版「仁義なき闘い」?
コレ実に秀逸!
最初から最後まで高い緊張感!ガーフィールドの演技は見事!特にラストの描き方がイイ!
あのシーンは「永遠に語られる」...と言っても過言じゃないかと思う。ネタバレになるんだけど、良心を取り戻した主人公に対して、上司が主人公の肩をたたいて褒めたシーン。実に印象的じゃわ。
あぁ恐っ
家を持つこと家族の夢なんだね。アメリカの恐さが垣間見えたような気がする。1%の残りに諦めずにかける、1%の勇気を忘れなかった男。。。しかし、金を借りたのは事実、返すのも真実なはず。映画としては、緊迫感もあったと思う。
パーカー
2016年劇場21本目。
あまり期待しないで見たけど久しぶりに良い社会派作品を見た。
ナイトクローラーよろしく生活のためにゲスい世界に身を染める主人公を描いているが、そこはさすがのスパイダーマンの中の人で、良心の呵責と闘いまくる。
主人公が悪徳不動産業者として成功しはじめてからの緊張感は、見ているこっちまで胃が痛くなる。
最後のマイケル・シャノンのサンキューは半分本音だったのでは?
それにしても、サブプライムローンとかとんでもないシステムがアメリカという広い土地でまかり通ったら、こういう状況は普通に多発してるだろうね。
マイケル・シャノンの「勝者の勝者による勝者のための国」というセリフは強烈だった。
終始ハラハラドキドキ!デニスの息遣いが伝播する!
「スパイダーマン」でお馴染のナイーブな役処が巧い、アンドリューガーフィールド主演のこの作品終始ハラハラドキドキされました。
彼が演じるこの映画の主人公デニスは、大工さん、といっても家を建てるだけでなく、電気の配線から何まで家のメンテナンス総べて請け負うオールマイティーの、言うなれば「何でも屋」の自営業者?悪く言えば、単なる日雇い職人といった類。でも仕事をやらせれば優勝だけれど、リーマンショック後の不景気で、建築業界はどん底で毎日の生活を営むのも難しい技術者だ。実際こう言う人がアメリカでも多くいるようだ。
更に彼は母と息子の3人暮らし。そして彼自身も銀行に金を借りて家をリフォームしていた事で、その支払いが出来なくなり、差し押さえられた家を遂には手放し出て行かなくてはならない羽目になる。
母親と息子とデニス達3人は暫くモーテルで生活をする事になる。
そして、ここからのデニスの反撃、逆転劇の展開が始まる。その逆転により様々な問題が浮上するところがこの作品の見所です。
日々日常的にこう言う事態は起こり得る現実であり、競争社会では当然の事なのだろう。しかし、この作品は俗に言う、勝ち組と負け組との両方を描きつつも、弱い者の目線でしっかり描いている分、庶民には共感が得やすい作品かも知れないですね。しかし、どう考えても家を購入出来そうもない低賃金の人達にも金を貸してマイホームの幻想を持たせてしまった経済戦略が有り、それを破綻させ、その中で大きな利益を得た人達がいたのだから、先行き破綻が見えるような戦略をした社会批判ドラマといった処の作品でした。
アンドリューは勿論の事、母を演じたローラ・ダーン。アンドリューの雇用主となった不動産ブローカーリックを演じたマイケル・シャノンや、デニスの息子を演じた子供も可愛かった!
と言うわけで、アメリカの厳しい現実社会、熾烈な競争社会の中で生きる人々の日常がリアルな作品で、映像作品としては終始ハラハラドキドキとデニスの気持ちが伝わる作品で面白い出来だったと私は思う。
これをアメリカの光と影と見るか? 競争社会の歪と捉えるか、或いは極当然の日常の現実と捉えるか、評価の分かれる作品かも知れない。
さて貴方なら、どんな判定を下すのだろうか?
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