劇場公開日 2016年1月30日

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残穢(ざんえ) 住んではいけない部屋 : インタビュー

2016年1月31日更新
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竹内結子、新成人・橋本愛&かつての自分に捧げるエール

「映画を見て、そのまま家に“持って帰っちゃった”感じ」。竹内結子は映画「残穢【ざんえ】 ―住んではいけない部屋―」で描かれる、これまでにないタイプの恐怖をそう表現する。映画などフィクションの世界での恐怖描写は「基本的に大丈夫」と語る橋本も、中村義洋監督による本作の描写には「裏切られた(笑)」と明かす。本作でホームズとワトソンよろしく、恐怖の謎を解き明かしていく相棒としてタッグを組んだ2人が、独特の恐怖の楽しみ方を明かした。(取材・文・写真/黒豆直樹)

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原作は、小野不由美氏が「一生に一度しか使えない」と語る渾身のアイデアを用いて執筆し、山本周五郎賞に輝いた小説「残穢」。部屋で聞こえる奇妙な音の正体を探るべく、作家の「私」と住人の久保は過去の住人や事件を調査していくが、関係者がこの部屋ではなく引っ越し先など別の場所で不幸な末路をたどっていることが判明する。

失礼を承知で言うと、本作の主人公は竹内と橋本ではない。竹内の言葉を借りるなら、本当の主役は「この現象の謎を探るという行為であり、恐怖そのもの」。確かに2人は探偵コンビのようにあちこちを嗅ぎ回るが、彼女たちの個性や内面はいい意味でほとんど見えてこない。竹内が演じる作家はあくまで名前のない「私」であり、竹内は「ある意味で私は傍観者の立場にいる。運転席に久保さんがいて、私は助手席で、恐怖を伝えていくナビゲーター」と語る。

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橋本も「運転手の役割を全うしました」と同調する。「実際、キャラクターを作ろうと思えば、心霊大好きの変人であれ、野暮ったい女子大生でも何でもできたと思います。決め込むことなく衣裳合わせに行って、そこで決めようと思っていたら、すごく当たり障りのない衣裳があって(笑)。もう一度、脚本を読むと、人物描写や明確なセリフがほとんどないんです。だからこそ、作為的にキャラクターを表現するようなものを一切排除して、まさにドライバーとして物語を運ぶことを意識していました」。

では、ドライバー&ナビゲーターの目から見て、本作の恐怖の魅力とは。一度目の鑑賞では、途中からまともに目を開けていられなかったという竹内だが、真の恐怖は「見終わった後に来る」と語る。「淡々と、ドキュメンタリーのように進んでいくんですよ。だからこそ逆に、家に帰ってもまだ続いている感じがするんですよね。そうすると、今まで気にも留めなかった物音や風の音、灯りの揺れが気になって『あれ? まだ(映画が)続いているの?』と思わせられる」。

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橋本は、中村監督ならではとも言える構成力を挙げる。「最初の掴みでまずしっかりと怖さを見せるんですけど、その後はあえて出さないんですよね。恐怖を煽るような描写もそんなになくて、淡々と当たり前に撮られている。ホラーというよりも、むしろ謎の実態を調査する感じで進んでいくので『これ、あくまで謎解きが描かれていて、恐怖はないんじゃない?』と思わせておいて……、からの裏切りが鮮烈ですね(笑)。一気に突き落とす怖さ、結末の意地悪さ。監督の性格の悪さが出ているなあって感じます(笑)」。

2人は今回が初共演。ずっと恐怖におびえていたという竹内は、橋本に「おんぶに抱っこでした!」と笑う。「最初に顔を合わせる前は『冷たい』に近い、クールな印象を持っていて、話しかけても大丈夫なのかな? と思っていたんですが(笑)、意外に大丈夫でした。いや、大丈夫どころか一緒にいて頼もしかったです」。

ちなみにその橋本、20歳の誕生日を迎えたばかり。竹内の「どう? 何か変わった?」という言葉に、「まだ社会にさらされていないですし、なかなか実感が(笑)」と首を傾げながらも続ける。

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「自由というか選択肢が与えられる分、逆に不自由でもあるのかなと感じています。これまでダメだったことに対し、選択する権利が与えられ、手を出すかどうか自分で決めなきゃならないので、そこは間違わないようにしたいです。ただ、未熟さや欠けているところがあることも、この年齢においては持ち味でもあるのかな? という欲張りな気持ちもあります(笑)。バランスよくありたいけど、バランスがいいとつまらなくもなる。バランスよくなりたいと頑張っている過程が一番良いんだろうなと思いつつ……」。

竹内はその言葉に「確かに、ちょっとした緊張感と危うさが愛ちゃんの魅力だと思います」とうなずき、「大人だなあ」としみじみと漏らす。

「私は、ちょうど朝ドラ(『あすか』)が終わってしばらく経ったころが20歳。目が覚めたら大人になっていると思っていました(笑)。サナギのように皮がペロリとむけるんじゃないかって期待していましたが、何も変わらず、そう思ったまま30歳も越えました(笑)。自分が20歳のころは、周りが大人ばかりで、同世代の俳優さんと芝居する機会があまりなかったし、大人たちに遅れまいといっぱいいっぱいでした。だから、愛ちゃんたちがうらやましくもあるし、自分の言葉を持っているのも素晴らしいと思います」。

では、橋本へのエールを込めながら、あの頃の自分に声を掛けるなら?

「何でしょう。『周りが自分を変えてくれるわけじゃなく、自分でやるしかないんだから頑張れよ!』ですかね(笑)?」

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