劇場公開日 2015年4月17日

「芸術家の生まれ出る地点」セッション よしたださんの映画レビュー(感想・評価)

2.0芸術家の生まれ出る地点

2017年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

怖い

興奮

 DVDを借りて、ヘッドホンで鑑賞した前回はその音質に納得できず、翌日Blu-rayを借り直してスピーカーで再鑑賞。
 デジタルの押し出しの強いサウンドながら、ブラスの細かな震えやスネアの音の立体感がはっきり聞こえ、音楽映画として満喫することができた。
 熱血教師と彼に複雑な思いを抱きながらも、音楽から離れられない学生の邂逅。
 一流の演奏家となるために乗り越えなければならないものがいろいろあり、ほとんどの者が途中で挫折する。血反吐を吐きながら、また、涙を流して、もしくは生命の危険を冒した揚げ句にその挫折を味わうのだ。
 成功者は彼らの屍を乗り越えて、賞賛を浴びる地点に辿り着く。教師の仕事は、そのほとんどが屍となるべき者を送り出すことなのだと、この音楽教師は知っている。
 非人間的。行き過ぎた指導。暴力。精神的苦痛。これらを乗り越えるつもりのない人間に、芸術やスポーツの高みを目指す資格はない。そうした犠牲を積み重ねた末に、ほんの一握りの歴史に名を残す芸術家や選手が生まれるのだ。
 だからこそ、芸術やスポーツは尊い。全くの他人が心の底から賞賛するものになる。
 狂っている?そうだ、狂っているからこそ人々はそれに熱狂し、金を払う。
 休日に映画など観て、ネットに感想を書き込んでいるような人間が、何万回生き直したとしても到達できない地平である。そんな人間が、芸を極めようとする者の人間性や社交性を云々するんじゃない!

佐分 利信