「過酷な状況下でも支えがあればこそ生きていける」やさしい本泥棒 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0過酷な状況下でも支えがあればこそ生きていける

2015年1月26日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

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幸せ

世界的ベストセラーの映画化。
1938年、ドイツ。母が共産党員故、里子に出されたリーゼル。ある時広場で焼かれた本の中から一冊を盗み、本に魅了された彼女は、本を通じて読み書きを覚え、本を糧に厳しい時代を耐え抜く…。

戦争×子供という鉄板ジャンル。
個人的にも、戦場シーンは描かず戦時下の庶民の姿を通して戦争の愚かさを訴えるという好みの作風。
レンタルを密かに待っていた。

戦時中のドイツ言うと、悪いイメージしかない。
でもそれは、あのちょび髭独裁者とそれに心酔した者たちのせい。
一庶民には何の罪も無い。戦時中の日本や今の北朝鮮も然り。
いつだって庶民は振り回される犠牲者なのだ。

ヒロインのリーゼルも過酷な道のりを歩む。
その時支えになったのが、本。
本を通じて広がる、知識や考え。
ろくに読み書きも出来なかったリーゼルが終盤、爆音響く防空壕の中で覚えた本を語り聞かせるシーンは、ジ〜ンとさせるものがある。
演じたソフィー・ネリッカは実力派女優として成長するだろう。

もう一つ、リーゼルの支えとなったのが、周りの人々。
里親のハンスとローザには、実の親と変わらぬほどの温もりを感じた。
演じたジェフリー・ラッシュとエミリー・ワトソンはさすがの名演。
いつも優しいハンスといつも怒ってるローザは、「赤毛のアン」のカスバート夫妻を思い起こさせた。
友達となる少年ルディはちょっとウザいが、純真。
里親夫妻が匿う事になったユダヤ人青年マックス。この時代、バレればタダでは済まされないが、人としての正しさを訴える。

監督ブライアン・パーシヴァルは本作が映画監督第一作目とは思えない正統派の演出。
エンタメ大作系とは違うジョン・ウィリアムズによる音楽も美しい。
また、ナレーションの“人物”がユニーク。

日本では昨年初夏公開だったのが、突然の中止に。
他愛無い作品なんかより劇場未公開がもったいない、見て損ナシの良作!

近大