劇場公開日 2013年3月9日

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「静と動と美と醜と善と悪と」蟻が空を飛ぶ日 HARAHARAさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5静と動と美と醜と善と悪と

2013年3月15日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

殺人組織を『会社』、殺人を『仕事』と言うだけあって、健二や大道寺達が行う殺しは、機械的で効率的。殺す側と殺される側、双方の負担をなるべく減らすよう、工夫や努力さえ見える。一方の真紀は、無計画ではないのだけれど、衝動的で破壊的。特に第二の殺人は、理由も方法もあまりに生々しく、見ているこちらも息苦しくなり、画面から目を逸らしてもなお、夢に出てきてしまいそう(・・;)
ただ、懲りすぎたカメラワークやアングル、加工などは無いため、映像そのものはとても見やすく、目が洗われるような美しいシーンも随所に有り。前述の『第二の殺人』が無ければ、もっといろんな人にオススメできるのに…と思う反面、こういう対比が、この作品の魅力でもあるのかな?という気もしなくもない(若干 弱気)
その両極端さは、登場人物にも当てはまる。酷薄で冷淡で利己的で過激、でも、時に一途で純粋で穏やかで、小さな生き物に優しさを見せる。それが不自然でなく、意外に感情移入しやすいキャラになっている。←軽く言うならツンデレにギャップ萌え、そしてグロかっこいい?
返り血を浴びた姿が凄絶に美しい、本能に忠実な真紀と、抑えているのか希薄なのか、あまり感情を出さず、痩躯に儚さすら漂わせる健二。『最初の殺人』の動機も含め、対照的な二人は、通常なら有り得ない出逢いと再会を果たす。二人の間に、ほんのり恋愛コメディ(は、実は全然観たことないけど ^^;)っぽい雰囲気も流れるが、人を殺してこその巡り合いと思うと、ゾッとする部分もある。
そんな二人は、『会社』からの指令により、とある人物をつけ狙う。自分は主に健二の目線で見ていたため、気づくと、ターゲットの隙を必死になって探していた。無意識に、「そいつを殺して生き残れ!」と思ってしまっていたらしい(苦笑)ターゲットに入れ込んで観ていた場合、「志村―っ!うしろーっ!」的な気持ちになったのかな(爆)
ともかく、健二や真紀の非道な振る舞いを目の当たりにして、それでも応援したくなるって、なかなか無いかも。
(人を殺した人間が)幸せになるのは罪ですか?
映画のチラシにあった問いに、自分は明確な答えを出すことができない。殺されたのが知人なら、あるいは悪人なら、等々、あらゆるケースを考えてしまうから。かわりに、この映画を観て抱いた問いを返してしまう。
あの人達が、他者の命を奪い続けたと知りながら…幸せになってほしい、と願ってしまったのは、罪ですか?

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HARAHARA