劇場公開日 2013年5月25日

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体脂肪計タニタの社員食堂 : インタビュー

2013年5月23日更新
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優香&浜野謙太 等身大の役柄に込めた思いは「自分を嫌いにならないこと」

累計発行部数532万部を突破したベストセラーレシピ本「体脂肪計タニタの社員食堂 500kcalのまんぷく定食」を原作に、健康計測機器メーカー・タニタの社員食堂にまつわる実話を大胆な脚色で映画化した「体脂肪計タニタの社員食堂」。肥満社員のダイエット計画を担う栄養士・春野菜々子役で映画主演を果たした優香と、気弱でぽっちゃり体型の副社長・幸之助役を演じた浜野謙太が、それぞれ等身大で演じた役柄を愛着たっぷりに振り返った。(取材・文/山崎佐保子、写真/堀弥生)

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世界で初めて体脂肪計を売り出した健康機器メーカー・タニタが、社員の健康維持・増進を目的に1999年に本社内にオープンした「タニタ食堂」。今では飲食チェーンとの業務提携によって「丸の内タニタ食堂」を開業するなど、ヘルシーでおいしいメニューの数々が話題となり、レシピ本は社会現象を巻き起こすほどの売り上げを記録中だ。そんなレシピ本を原作に、「体脂肪計を作る会社の社員がデブでどうする!」という危機感から生まれたダイエットプロジェクトが映画の中で動き出す。

優香が演じるのは、料理が苦手で元ぽっちゃり体型の落ちこぼれ栄養士・菜々子。快活な姉御肌で、ふだんのイメージとはかなりのギャップがある。「最初の脚本では菜々子さんはこんなに活発な人ではなかったので、静かで柔らかい映画になるのかなと思っていた。だけど李闘士男監督が『もっと面白くなきゃつまんないよ!』って、テンポの良いコメディになったんです。ふだんの私はほんわかとした柔らかい女の子のイメージなので、それとは真逆のことをやってほしいと。髪型もショートヘアのウィッグにして、口調やトーンも低くしてみよう、そういう優香を見たことがないのでと言われ、それは楽しそうだなって。それで菜々子さんの性格もガラっと変わったのだけど、わりと私の素に近い部分も多かったので、やりにくいというよりはとにかく楽しかったです」。

エクササイズやヘルシーレシピなどをまとめたボディブック「優香ボディー」など、健康的な体づくりへの関心が高いことでも知られる優香。まさにハマリ役ともいえるキャスティングに、本人もやる気満々だった。「菜々子さんはもともと太っていたというコンプレックスがあるので、太っている彼らの気持ちも分かっているからこそ『頑張れ!』って気持ちが人一倍強い。脚本の中ではそこまで強くは出てこないけど、おデブちゃんたちにすごく愛情がある。スクリーンで口にはしないけど、実際にかわいいと思うその愛情みたいなものがうまく端々から伝われば良いなと思っていました」と温かい視線を注ぐ。

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病に倒れたタニタのワンマン社長・卯之助(草刈正雄)に代わり、同級生の菜々子とともに社員食堂の改革に挑むのは、ぽっちゃり体型の頼りない2代目の副社長・幸之助。何をやっても中途半端でマヌケな幸之助だが、浜野にとっては思い入れの深いキャラクターだという。「太っている人がやせるというテーマは、太っている人を否定するみたいなことにならないのかなという不安もあったんです。僕も太っていたことがあったから。だけど、脚本を読んでみたら全員がかなり愛嬌のあるキャラで、特に幸之助は平凡なんだけどいちいち面白いことをしちゃうかわいいやつで、それでいて人をイラっとさせる。すごく醍醐味があるキャラクターだなと思って、幸之助は絶対やりたいって思いましたね」と目を輝かせる。「デブをかわいく描きたい!」という李監督と“かわいらしいおデブちゃん”像を練り上げ、「これは面白いと思った。自分の内に深く堀り下げていくテーマになっていきそうだなと感じたんです」と充実感をにじませた。

健康的なダイエットには、もちろん適度な運動やカロリー計算が不可欠。しかし菜々子は、「自分を嫌いにならないこと」がダイエット成功の極意だと語る。撮影時、さまざまな意味でターニングポイントを迎えていたという優香は、この役どころとの出会いに深い縁を感じていた。

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「去年、写真集を作るにあたって半年くらい前から体をしぼったり、自分を見つめ直す作業をしていたんです。一緒に写真集を作っていたスタッフさんとの絆(きずな)は本当に強くて、これまでの15年間で一番、一生懸命になってものを作った気がした。今まで色々なことをやってきたけれど、できあがってもどこか自分のものじゃないような感覚、どこか他人任せな気持ちもあった。30代で気づくのは遅いのかもしれないけど、自分が頑張っていいものができたってことがすごくうれしかったんです。やっと自信がもてた気がしたし、本当に自分が好きになった。自分を好きになるってなかなか難しくて、この映画ではそのきっかけとしてダイエットがある。菜々子さんのセリフは私自身も経験していたことだから納得もできたし、伝えたい気持ちがすんなりと入ってきたんです」。

そんな優香の言葉に浜野は大きくうなずきながら、「撮影初日の飲み会で優香さんの悩みや試行錯誤を聞いて、すごく意外だった。“優香”ってもう確立されていて、壁にぶつかっているイメージなんて全然なかった。『そんな貪欲な人だったんだ』って、すごく気合が入ったのを覚えています」と強い刺激を受けていた。そして、「『自分を嫌いにならない』っていうテーマは僕にとっても同じ。実は幸之助の物語って、途中でちょっと奮起して物事が良く回り始めるってだけ。ただ、そこに至るまで、自分を否定せずにどう現状を受け入れるかというのは、すごく難しいこと」。インストゥルメンタルバンド「SAKEROCK」のメンバーとしても、「僕も幸之助のように苦労なく育ったんです(笑)。でも、僕には僕の切磋琢磨、試行錯誤にぶつかるわけで、色々と問いかけたいところがある。それが伝わって映画を見て泣いている人とかいると、ちょっと成功かなって思います」とはにかむ。優香も、「こんなにダメ人間なのに嫌いになれない幸之助って、ハマケンさんがやってこそのもの。愛らしさがありました」と笑い合った。

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