劇場公開日 2020年8月3日

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「何とも言えない感情を揺さぶる作品。小石の気持ち」道(1954) コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5何とも言えない感情を揺さぶる作品。小石の気持ち

2024年4月17日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

知的

内容は、大道芸人へ親に売られるジェルソミーナと言う知的障害を持つ少女と傲岸不遜な大道芸人の2人のロードムービー。
 印象的な台詞は、『この世のものは何かの役に立っている。お前も同じだ。』サーカス一座に席を置いていた気のいい若者からジェルソミーナにかけられる言葉。その時に小石も同じだと言われるシーンは、道という幅広い解釈にも繋がる伝えたい一部分でもあったのかなと感じます。気のいい芸人の若者が別れ際に見せる間と涙ぐむ表情や精神錯乱状態のジェルソミーナの動物の鳴き声にも似た泣き声は、背筋が凍りつく様な恐ろしさがあり感動しました。
 印象的な立場は、綱渡りの気のいい芸人の若者と主人公ザンパノの人物対比です。この作品は、様々な対比構造で作られているので観ていて時代性もあり読み解くのに時間がかかります。それ故に何とも言えなく心に深く重くのし掛かる物があります。綱渡りは人生についても同じで、いつ死ぬかは覚悟の上の厭世観が付き纏うし、鋼鉄の肺を持つ男は力のみに頼りきり歳をとり力が無くなると、一気に自信喪失に陥る。修道院での尼さんとの会話もジェルソミーナとの対比で感情的に訴える諦観があり非常に感情を揺さぶられます。
 印象的な場面は、何と言っても『ザンパノ彼の様子が変よ!?』と急に発作の様に話出し動物が鳴く様に泣く姿はホントに演技か?と思えるほど引き付けられました。あの場面を見るだけでも十分価値はある様に感じます。
 映画の冒頭『ジェルソミーナ!』『ローザ(姉)が死んだ』との海辺の砂浜でジェルソミーナが、落胆する場面から始まます。最後では『・・・』無言で懺悔し自分に落胆するザンパノで終わるところ何回観ても素晴らしい。台詞は一つ一つとっても面白く。暗喩がふんだんに盛り込まれ技術の素晴らしさを感じました。個人的には、気のいい綱渡り芸人の若者が、ザンパノと喧嘩して時計が壊れたって言った後の死に関係する暗喩が分かりやすくて好きです。
 終始暗くて気分の楽しくなる様な話では無いですが、当時の時代性や人間の感情描写が非常に上手いので名作と言われる所以かと感じました。『ザンパノ。少しは私の事好き?』って聞くジェルソミーナは心温まる一場面でした。

コバヤシマル