劇場公開日 2013年3月1日

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ジャンゴ 繋がれざる者 : 特集

2013年2月25日更新

アカデミー賞2部門受賞!
果たして、「ジャンゴ」は映画ファンが“観るべき映画”なのか!?

クエンティン・タランティーノ監督が、アメリカの黒歴史=奴隷制に真っ向から向き合った「ジャンゴ 繋がれざる者」がいよいよ3月1日に日本公開。タランティーノ作品史上最大のヒットを記録し、アカデミー賞2部門受賞まで果たした同作は“映画ファン必見”の作品なのか。その疑問に対する回答がこれだ。

奴隷上がりの黒人とドイツから来た元歯医者──異色の賞金稼ぎコンビ結成!
奴隷上がりの黒人とドイツから来た元歯医者──異色の賞金稼ぎコンビ結成!
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アメリカの黒歴史にタランティーノ流で挑む!
アメリカの黒歴史にタランティーノ流で挑む!

“タランティーノ映画”といえば、個性的な面々が登場し、トリッキーなセリフ回しとバイオレンスを繰り広げ、さらにはセンスあふれる選曲のサウンドトラックが注目を浴びるクライム・アクションを思い浮かべるユーザーが多いことだろう。もちろん、それは間違いではない。だが、奇をてらった描写だけがウリなら、映画監督として約20年も第一線で活躍できるはずはない。前作「イングロリアス・バスターズ」でナチスを叩きつぶしたように、タランティーノの中で近年頭をもたげてきたのが“社会派テーマ”。一見、単なるアクション映画に見せつつも、タブーともされる重いテーマを作品全体で浮かび上がらせる手腕はさらに磨き上げられ、今作「ジャンゴ 繋がれざる者」では、アメリカがこれまで目を背けてきた「奴隷制度」──スピルバーグが「リンカーン」で描くあの奴隷制だ──を白日の下に晒す。奴隷出身の黒人と元歯医者の賞金稼ぎコンビの異色アクションという見た目ながら、根底には大いなる野心があふれる。エンターテインメント心はそのままに、骨太な映像作家に成長したタランティーノ、入魂の一作なのだ。


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復讐のガンマンの壮絶な死闘に世界が沸いた
復讐のガンマンの壮絶な死闘に世界が沸いた

その入魂作に対する、アメリカ、そして世界の観客の反応はどうだったか。アメリカでは約3012万ドルのオープニング週末興行収入を記録したのち、タランティーノ映画としては史上最速となる13日で興収1億ドルを突破。累計興収では、2013年2月現在で約1億5700万ドルを記録しており、これまでの「イングロリアス・バスターズ」の約1億2050万ドルを抜いて、タランティーノ映画史上最大のヒットを達成している。全世界に目を向けても、日本公開を迎える以前にすでに世界興収約3億6560万ドルを叩き出し、こちらも「イングロリアス・バスターズ」の約3億2150万ドルを抜いて“史上最大ヒット”をものにしているのだ。ちなみにこの約3.6億ドルという数字は、「ターミネーター4」「トイ・ストーリー」「ダイ・ハード3」「ジュラシック・パークIII」といった大ヒット作の世界興収と肩を並べるもの。全世界の映画ファンから高い評価を集めていることを意味している。


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実力派揃いのキャスト陣にも大注目
実力派揃いのキャスト陣にも大注目

「ジャンゴ」が見事なのは、興行的なヒットに加えて、数々の映画賞からも高い評価を受けていることだ。その筆頭が、脚本賞、助演男優賞の2部門におよぶ本年度アカデミー賞の受賞(ノミネートは作品賞、脚本賞、助演男優賞、撮影賞、音響編集賞の5部門)。脚本を努めたのはタランティーノ監督自身で、ゴールデングローブ賞でも脚本賞を受賞しているのだ。そして、オスカー俳優ジェイミー・フォックス演じる主人公ジャンゴを導く、賞金稼ぎシュルツに扮したクリストフ・ワルツは、すでに「イングロリアス・バスターズ」でアカデミー賞助演男優賞を受賞ずみ。その実力は今作でも発揮され、ゴールデングローブ賞助演男優賞ほか数々の映画賞で男優賞を受賞し、見事に2度目のオスカー受賞も果たした。タランティーノの監督&脚本力、スタッフ陣の製作力、そして俳優陣の演技力が支える“作品力”──映画ファンなら、そのクオリティを劇場で確かめるしかない。


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狂気をたたえるディカプリオは必見
狂気をたたえるディカプリオは必見

フォックス、ワルツのオスカー俳優の存在感もさることながら、この2人以上の強烈な存在感を放つのが、レオナルド・ディカプリオだ。彼が演じるのは、ジャンゴの妻が囚われている巨大な農園キャンディ・ランドを支配する若き暴君カルビン・キャンディ。奴隷同士を戦わせ、敗者には残酷な死を迎えさせる残忍さは、ディカプリオ史上はもちろん、それをはるかに超えて、アクション映画、サスペンス映画屈指の悪役のひとりと認定しても過言ではないほど。完全なる悪役に挑むのは初めてだけに、まさに“誰も見たことがない”ディカプリオの姿が拝める。

ジャンゴとシュルツがいかにキャンディの目をあざむき、愛する妻を救い出すのか。黒人でありながら究極の差別主義者のスティーブン(サミュエル・L・ジャクソン)を従え、狂気とともにジャンゴたちに立ちはだかるキャンディ=ディカプリオの姿を目撃するだけでも、劇場に行く価値は充分にある。


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フランコ・ネロ(右)との新旧ジャンゴ揃い踏みも
フランコ・ネロ(右)との新旧ジャンゴ揃い踏みも

「ジャンゴ」というタイトルとその背景についても知っていると、本作の“重み”が一段と増すのは間違いない。ジャンゴとは、アメリカの西部劇を模倣して1960年代から70年代前半にかけて量産されたイタリア製西部劇=マカロニ・ウェスタンの代名詞となったキャラクター名。66年のセルジオ・コルブッチ監督作「続・荒野の用心棒」で初めて登場し、棺桶を引きずったガンマンとして強烈な印象を放ったのだ。タランティーノが、クリント・イーストウッドを一躍スターにしたセルジオ・レオーネ監督の「荒野の用心棒」など、ダーティな主人公像と暴力シーン満載の過激さで一世を風びした同ジャンルの大ファンであることを踏まえた上で、タイトルを眺めると……「ジャンゴ」が、一筋縄ではいかないアクション大作であることが理解できるはずだ。アナログに強くこだわるタランティーノが「CGは一切使っていない!」と公言する本作では、アメリカの大自然をバックにした壮大なロケショーンを敢行。映像、音楽、ストーリーのすべてに、映画好きを刺激する“映画愛”を存分に叩き込んでいるのだ。


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