劇場公開日 2013年2月23日

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「吉高由里子の魅力を再発見」横道世之介 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5吉高由里子の魅力を再発見

2024年3月31日
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鑑賞方法:DVD/BD

評価の高い作品なのは知っていたし、「悪人」「怒り」などの吉田修一の描く、青春?恋愛?マイナス感情がなさそうなヒューマンドラマ?とはどんなものだろうと興味はあったが、なかなか観る気になれずにいた。
演技力があまりよくない吉高由里子が観る気をそぐ原因だった。

しかし実際に観てみると、上手いこと役にハマっていたと思う。
彼女の演技はしゃべりがイマイチだが動きによる演技は悪くないのだと気付いた。
お嬢様言葉の祥子というキャラクターが、セリフに心が入らない吉高の弱点を誤魔化せたように思う。祥子は何を考えてるのかわからない天然なところがあるからね。
作品の雰囲気が、コミカルで少々大袈裟な動きも可能にしたので、祥子の感情は動きを見ていればいい。

ビーチボールに掴まる祥子。うちわを扇ぐ祥子。洗濯物を畳む祥子。カーテンにくるまる祥子。
動きが良ければ魅力的なキャラクターは生み出せると証明したように思う。

作品のほうは、感情の起伏もストーリー的な起伏もほとんどない、長回しによるごくありふれた日常感と相まって、凄く普通。しかし面白いわけでもないのに永遠に観ていられそうな不思議さがある。
それはそのまま主人公横道世之介を表しているようだ。

すごく変わった男のようで実は至って普通な、ある意味主人公に相応しくないほどの無個性さなのだが、この作品はそれでいい。
世之介と出会ったキャラクターが過去を思い出しなぜか笑顔になることこそが主題で、世之介が特別で特殊なオンリーワンの存在であってはならないのだ。ちゃんと思い出せるように名前だけは特殊だったけどね。

観ている私たちにとっての世之介はごくありふれた何でもない日常を描いた作品そのものだ。
そこから自分の過去にいた世之介のような友達を呼び起こし懐かしむ、そんな作品なのだ。

しかし残念ながら友達の少ない自分には呼び起こされるものがなかった。
それはつまり、涙も笑いも苦さも甘さも、何の感情の変化も訪れない無に等しいもので、作品の評価が上がらない理由だ。

それともう一つ、1987年の時代感を懐かしむというのもあるだろうが、これは自分より上の世代で、過去の時代でありながら未来のことのようなズレがあり当然懐かしむことは出来なかった。

漠然とだが良い作品だったし、吉高由里子は可愛かったのだが、87年に大学生でもなく友達も少ない自分には見事にハマらない作品で、あまり楽しめなかった。

あとは、主演の高良健吾のことも少し書きたい気もしたが、書けることは一つしかなかった。彼は大体いつも良い。

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つとみ