劇場公開日 2012年7月14日

「『苦役列車 』が悲惨にみえないのは、“友ナシ、金ナシ、女ナシ”でも“若さ”があるからだろうと思った話」苦役列車 ウシダトモユキさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0『苦役列車 』が悲惨にみえないのは、“友ナシ、金ナシ、女ナシ”でも“若さ”があるからだろうと思った話

2015年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

興奮

原作との比較による賛否はあるようなんですけど、原作未読で思い入れのない僕にとっては、楽しめた映画でした。

映画.comのレビューなんかでは、主人公がクズ過ぎて感情移入できなかったという感想をちらほら見かけました。僕はちょっと変な感想なんですけど、

もし自分が俳優だったら、いちばん演じてみたい主人公。

でしたねー。

こういう人が身近にいて、友達になりたいか?っていったら絶対イヤです。
また自分の人生をやり直すとしたら、こういう生き方したいか?っていったらそれも絶対イヤです。
でも、言うことのゲスっぷり、行動のクズっぷり、森山未來の演技もスゴいんでしょうけど、自分が「言えないこと・やれないこと」がどストレートに描かれていて観てて痛快でした。「映画の演技をしているんです」っていうエクスキューズがあるなら、是非こういう人間になってみたい!と思いましたよ。

決して「不器用だけど根はいいヤツ」とか「貧しいけれど頑張ってチャンスを掴むヤツ」とか「女にはモテないけど、純情なヤツ」とかでは全くないです。また逆に「完全にアウトロー」でもないのも、偽悪的なニヒリズムでなくてイイのです。

主人公が(文字通り)裸一貫で小説を書き始めるというラストシーンを指して「安直な青春映画に成り下がった」という感想も耳にしましたけど、それは私小説の原作者である西村賢太と繋げた「メタ視点」だと思います。一本の映画としてみるなら、「かつて見下していたオッサンが夢を叶えやがった。だったらオレも小説を書こう」というラストになったわけで、それ以降どうなったかというのは、別に西村賢太の現在に繋げなくても、観客の想像に委ねられてると解釈していいわけです。映画が安直なのではなくて、主人公が安直だってことです。

でもその安直な主人公が、さほど悲惨にみえないのは、なんたってまだ若いってことですよね。友達がいないとか金がないとかって苦しがってても、19歳ですからね。ラストが3年後に飛んだのを考慮しても22歳。圧倒的な“若さ”という財産を持ってるってことですよね。
41歳から人生やり直した僕と較べて見みたら、その差約20年間。20年間もあれば、何かを見つけて、それを身につけて、何かのカタチにするまでの期間としては充分に潤沢です。

その“若さ”という財産の価値は、若さゆえに認識できず、活用しにくいというのは人間の皮肉な特性ではあるんですけどね。

ウシダトモユキ(無人島キネマ)