劇場公開日 2007年3月3日

「すでにフォトリアリズム的表現が完成の域に達していることに驚いてしまう一作」秒速5センチメートル yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0すでにフォトリアリズム的表現が完成の域に達していることに驚いてしまう一作

2024年4月3日
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2007年公開の本作ですが、ようやく鑑賞の機会を得ました。後年、『君の名は。』(2016)以降の諸作品でその映像美を広く知らしめることになる新海誠監督ですが、すでに本作でその描写力は完成の域に達しているようでした。

事物の物理的な動きや質感を緻密に捉え、様々な光学的な現象を盛り込んだ上で監督が描く世界は、写実的である一方で何らかの感情を喚起しないではいられないような情感がこもっていて、明らかにフォトリアリズム的ではあるんだけど、さらに新たな地平を拓いたかのようです。

作品全体は約70分ほど短く、さらに3つの短編から成り立っているため、映像に目を奪われているとあっという間に観終わってしまいます。それぞれの挿話に登場する、貴樹という主人公の成長物語という側面もあるんですが、一方で作中では彼が同一人物であるとは(確か)明言していなかったため、それぞれを別の物語として観賞する、あるいは平行世界的な世界観と理解して観賞することも可能です。

空や水など、後年の新開作品の代名詞的な要素はすでに本作で重要な鍵として登場しているので、これらの要素をどのように扱っているのかを探る、という現在ならではの視点で作品を鑑賞することも可能です。観終わった後は山崎まさよしの歌声が耳から離れなくなることうけあい!

yui