劇場公開日 2011年12月17日

フレンズ もののけ島のナキ : インタビュー

2011年12月17日更新
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山崎貴監督&八木竜一監督が放つ「メイド・イン・ジャパン」の底力

日本の映画市場において3DCGアニメは、「トイ・ストーリー」シリーズなどで知られるピクサー、「カンフー・パンダ2」などを擁するドリームワークスの寡占状態にある。その米二大メジャーの牙城を崩すのでは、と期待させるのが「friends もののけ島のナキ」だ。「ALWAYS」シリーズなどの山崎貴監督が、盟友の八木竜一監督と共同で手掛けた、日本の童話をベースにしたファンタジー。精ちな映像表現で生み出されたキャラクターたちが躍動する姿、そして考えさせられながらも心がふくよかになるストーリー展開に、メイド・イン・ジャパンの底力を感じた。(取材・文/鈴木元)

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きっかけは、山崎監督が幼稚園のころに読み聞かせでふれた童話「泣いた赤おに」だった。2005年、日本を代表するCG、VFX工房の白組が3DCGアニメの企画開発に着手したころ、提案したのがその童話を基にした初期のプロット(粗筋)だ。

山崎「すごい終わり方がショックで、軽いトラウマのようになっていたんです。だからこそ心に残っていて、ずーっと何かにしたいという思いがあったんでしょうね。CGでアニメを作るのが前提で、自分だったらこういうものがいいと出したのが『泣いた赤おに』だったんです」

だが当時、日本産の3DCGアニメは未開拓の分野で成功例もほとんどない。慎重に進めなければならないのは百も承知で、しかも実写映画の企画も複数抱えていた時期。そこで、白羽の矢を立てたのが白組の後輩の八木監督だ。2人は04年にゲーム「鬼武者3」のオープニング映像を一緒に制作している。

山崎「八木に投げちゃえば楽ちんだし、彼もデビューできるし、いいことだらけではないかと(笑)。新人がいきなり、ある程度の予算を組んだ長さのある作品でデビューするのはハードルが高い。だったら共同監督という形でなら……。1回デビューしてしまえばこっちのものだから(笑)」

恐ろしいもののけが住むと言い伝えられる不気味な島に、人間の赤ん坊・コタケが迷い込み、赤おにのナキ、青おにのグンジョーと出会う。実はもののけたちも200年前の戦以来、人間におびえて暮らしてきたため、2人!?もコタケを追い払おうとするが次第に友情が芽生えていくというストーリー。山崎監督から連絡を受けた八木監督は即答で応じる。

八木「山崎からプロットと、キャラクターのカラースケッチが送られてきたんです。電話があって『やる?』って言われたから、『うん、やるやる』って。そのプロットがとにかく面白かったんですよ」

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それが長い旅路の始まりとなるわけだが、企画として成立するかは未知数。山崎監督が「部活動」と称する脚本づくりは2年以上に及んだ。

山崎「原作はあるにせよ、ほぼオリジナル。そういうものは出資者が動かないという読みがあったけれど、せっかくのチャンスだし自分らがどのくらいのことができるのか確認したい。それで成立すれば、それはそれで面白いから試しにやってみましょう、と。いつでも撤退可能な、退路を完全に確保しながら進めていきました」

その後、出資を募るためのパイロット版の映像制作に着手。簡単に作ったミニチュアの背景に、CGで作ったナキやコタケをアニメーションさせて1シーンを作り、ナキの声を山崎監督が吹き替えたものを製作委員会候補各社に見せたが、反応は微妙だったという。だが、2人は後に声優に決まる香取慎吾、山寺宏一の声を勝手に拝借して入れた“隠し玉”バージョンを用意していのだ。

山崎「最初に見せたものは相当いい感じだったけれど、ものすごく高級な自主制作のようなもの。やばいなと思ったときに香取くん、山寺さんバージョンを見せた瞬間に皆の目の色が変わったんです。その力が強かったので、作品自体をすごく良くしてもらい、メジャー感を担保してもらったと同時に、企画自体も彼らの声だから成立したところがあります」

八木「キャラは最終的なものではなかったけれど、声が本物だからキャラクターが立ち上がってくるんです。これはもういけるなっていう方向性が見えました」

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インタビュー2 ~山崎貴監督&八木竜一監督が放つ「メイド・イン・ジャパン」の底力(2/2)
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