劇場公開日 2011年4月29日

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「封印されていた薫の記憶が呼び起こされる」八日目の蝉 根岸 圭一さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0封印されていた薫の記憶が呼び起こされる

2024年4月20日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

原作小説は10数年前に読了。そのため記憶の怪しい部分があるが、今作は原作以上に素晴らしい出来栄えだと思う。

忌まわしい事件の記憶を封印していた薫が、かつて自分が過ごした場所を訪れることで徐々に記憶の封印を解いていく。そして忌まわしい記憶という認識は誤りだったことに気づく。薫は普通の家庭で育って無いから、これから生まれてくる子供にどう接していいか分からなかった。しかし、実は自分が希和子に愛情をもって育てられていたため、子供にも同様に接すればいいのだと気付いた。そのため薫は、これまでのくすんだ灰色に見えていた自分の人生が、急に彩りを持ったように見え方が大きく変わったのだ。

希和子を演じる永作博美の演技が、文句のつけようが無いほど素晴らしいのがさらに感動を誘う。地域のイベントに参加したり、近所の子ども達と話したりする姿は、まさに愛情に溢れた優しい母親そのものだった。写真館の無愛想な店主も、色々察しているはずだがそれを態度や言葉に出さないところが、人それぞれの人生があることを理解しているように感じられてしみじみとする。

さらに、小豆島の美しさが素晴らしい。山の上から見える夕焼けに染まった海や山林の眺望や、ヒグラシの鳴き声が日本の夏を感じさせる。これらの映像が、希和子と薫の過ごした時間と合わさって、2人の色褪せない思い出になっているのを感じられる。

根岸 圭一
KEIさんのコメント
2024年4月21日

共感頂き有難うございます

KEI