劇場公開日 2011年7月2日

  • 予告編を見る

「短調のクラシックを聴いてるような映画」ラスト・ターゲット 77さんの映画レビュー(感想・評価)

3.0短調のクラシックを聴いてるような映画

2011年12月29日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

単純

原題は『THE AMERICAN』
ジョークも言わないアメリカン。
彼はヨーロッパで“アメリカン(よそ者)”として浮いていたけれど、“アメリカ人だから”じゃなく、殺し屋家業を選んだゆえどこにいても何をしててもその疎外感から解放されることはない。そんな男の哀愁歌のようなお話でした。タイトル旨い!

殺し屋だし銃撃も出てくるけれどこの上なく“静”の映画。

雪景色、静寂の中で続けざまに三人を撃つという掴みでグッと興味を引き付けられて、その雰囲気がそのまま作中に流れます。

BGMも最小限。実際はそんなことないかもしれないけどそう感じるほど静か。だから必然的に色んな“音”に意識が行って緊張感が高まるし、たまの主張のあるBGMは効果的にドキドキハラハラ気持ちを盛り上げてくれる。
ヨーロッパの美しい景色やG・クルーニーの大人にしか出せないセクシーさやヨーロッパの綺麗な女優さんたちの魅力も相まって静かすぎるほど静かな映画だけど、退屈するわけじゃない。肌に合う合わないはわかれると思うけど私はこういう雰囲気好きです。

一番の退屈しない理由は、矛盾というか謎の多い行動に“孤独”以外の主人公の心がみえてこない、ということ。(孤独感は完璧!熟睡できない仕事なんてイヤ!!w) 彼だけでなく周りの人の心中も。だから知りたくなる。この作りはすごく上手だと思う。のに…

説明しすぎな映画は嫌いだけど、この締め方はちょっと「ご想像にお任せします」が過ぎるかなぁ。“大人の味わい深い映画”から一転しちゃって、なーんだ残念というガッカリ感が。それとも深すぎてまだ私にはわからないのかな。

最後の車内の葛藤や蝶々なんかはすごくいい演出だと思うんだけど、今まで意識的に影の部分ばかりに焦点を当ていたのでこっちも全ての登場人物に対して半信半疑でみていたから、そこまで感情移入しきれていなかったしいまいち心が揺さぶられない。
“謎”の部分の展開も、ミスリードなんかがあるわけじゃなく普通に観てたら想像できる範囲で動いて少し物足りない。唐突に消化していくのでクライマックスで盛り上がり所だろうに「あっそうだったの」とちょっと温度低めで観てしまいました。それでいて謎は謎のまま。

でもなにこの監督!駄作!となるわけじゃなくて、嫌いになれず他の作品にも興味がでてしまう不思議な作品でしたw

77