劇場公開日 2011年7月2日

  • 予告編を見る

「ジャック=米国に見える」ラスト・ターゲット マスター@だんだんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ジャック=米国に見える

2011年12月11日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

知的

殺しを生業にする男・ジャックが何者かに襲われる。
襲撃者を始末するが、正体の発覚を恐れたジャックは関係のない女も殺してしまう。
その後、組織の指示でイタリアの田舎町に身を潜めることになるのだが・・・。

そもそも、なぜジャックは襲われたのか?
襲ったのは何者で誰の指示だったのか?
カステル・デル・モンテの石造りの建物や入り組んだ階段、人との交流といった情景を丁寧に描きながらも、忍び寄る襲撃者から逃れるサスペンスの色合いを散りばめ、もたつくでもなく先走るでもなく適度なテンポで緊張の糸を引き絞っていく。
とくに、ひとりふたりと出ていき、ジャックひとりだけが店内に残されるドライブ・インのシーンは、ぐっと息を呑んで見てしまう。演出が上手い。一本取られたという感じだ。

物音ひとつにも緊張してろくに安眠できない日々のなか、娼婦のクララに癒しを求めるようになっていくジャック。殺し屋としては歳がいってしまった、背中に蝶のタトゥーをもつ男の哀愁挽歌。

この映画、一見そう見える。だが待てよ。原題「The American」はイタリアの片田舎での“よそ者”という意味か? 違うような気がする。
欧州から見たジャックはアメリカ合衆国そのものなのではないだろうか。
武器を造り、その武器を使う国。
武力は敵を作り、報復と称したテロの脅威に戦々恐々とする日々。
ジャックとアメリカという国の現状が重なる。

映画は、サスペンスの形をとってはいるが、ジャックが襲われた理由も、ジャックを襲った犯人も、どちらも作者にとってどうでもよかったのではないか。
ジャック=アメリカひとりに、いい思いはさせない。ひとりだけ甘い汁を吸おうたってそうはいかない。
そんな風に見えるのは思い過ぎだろうか?

マスター@だんだん