劇場公開日 2011年12月17日

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CUT : インタビュー

2011年12月12日更新
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日本での撮影は並々ならぬ思い入れで臨み、4台のカメラを回した。「編集とカメラワークは黒澤明、カメラワークでキャラクターの心情の移り変わりを映していくのは溝口健二、沈黙のステディカムの使い方は小津安二郎へのオマージュです。このコンビネーションを今回意図的に使っています。どの名監督たちも音楽は一切必要としなかった。音楽をつけるのが失礼であるような映画を作っていたので、今回も使っていません。もともと僕の作品にも音楽はないんですけれど」とこだわりを明かす。

主演の西島には厳しい要求も出したが、その感性に全幅の信頼を寄せていた。「西島さんの才能と忍耐強さが、作品のスタイルに大きく寄与しています。ボディーランゲージ、沈黙の使い方、動き、怒り、すべての表現が自分の脚本を書くにあたっての鉛筆の役割を果たしてくれました。私のハートから生まれた映画でありキャラクターですが、表現したかったことの助けを西島さんが日本語でしてくださったんです」。

髪をバッサリと切り、ノーメイクに見える自然な表情で臨んだ紅一点の常盤貴子については、「常盤さんには『新しいことがしたい、自分自身の変化を待っている』と言われたのです。それにはまずはルックスから、ということで髪を切ってもらいました。衣装も私のシャツを貸したんです。外へ行かずにジムの中で起きていることを目で追う、そういうネズミの様なキャラクターを演じてほしいと言いました。あまりセリフもないけれど感情を表す目が必要で、男性ばかりのところに彼女の味を出してほしかったのです。西島さんとの化学反応はすばらしいものでした」と絶賛する。

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些細な質問に対しても、大きな身振り手振りを交えながら事細かに説明し、その鋭い眼光からは、古き良き映画への愛情、そして現代の映画業界が抱える問題への怒りがひしひしと伝わってくる。「私の他の作品のキャラクターも何かに執着心を燃やし、何かを証明しようと、常に限界に挑戦しているようなところがあります。何事にも正直で、何かを得るにはその対価を払わなくてはならないと考えます。キャラクターの言葉、文化の舞台が違っても、自分にとっては同じなのです」と語るように、本作の若き主人公もやはりナデリ監督そのものなのだろう。

>>西島秀俊インタビューへ

インタビュー3 ~西島秀俊、イランの名匠アミール・ナデリと探求した飽くなき“映画愛”(1/2)
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