劇場公開日 2010年11月13日

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「ハンセン病の教育的映画」ふたたび swing me again Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5ハンセン病の教育的映画

2013年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合70点 ( ストーリー:60点|キャスト:70点|演出:70点|ビジュアル:70点|音楽:75点 )

 ジャズバンドの話かと思いきや、映画の冒頭、ハンセン病についての注釈が書かれた画面が出てくる。これは重そうな話だなと覚悟した。

 個人的にはその当時の社会情勢と医療技術ではひどい対応もやむをえなかった部分もあると思うのだが、それで差別を受け人生を奪われた者の苦悩は測り知れない。だから命を懸けて過去を取り戻そうとするお爺ちゃんの思いは理解できた。
 これを見ていて、主人公が人生を奪われそれを取り戻すために命懸けの執念を燃やす映画「パピヨン」を思い出した。またその作品の中でも皮膚がただれたハンセン病患者が僻地に隔離され人間扱いをされていない姿が描かれていたが、日本での隔離施設の生活はどうだったろうか。

 おじいちゃんの話の本筋は良かったのだが、ハンセン病に関する歴史や認識や差別に関する情報を取り入れている部分は教育情報番組のようでもある。また現在にもまだ残る偏見や差別を取り込んで問題提起するのも引っかかる。主題としてハンセン病の汚点や問題を見せるというような意図もあるのだろうが、それは映画としては見ていて純粋に作品にのめり込むのを阻害していることにもつながる。
 バンド仲間との再会やすぐに演奏してしまえるのも安直であるし、音楽自体は良かったがいかにも練習を積んだプロが裏で演奏しているというのも不自然さを感じた。あまり古臭い曲と下手な演奏ではつまらないし、ここらあたりは難しいところ。
 ただこの映画の前提としてハンセン病に関することを伝えたいという主題があり、そのため全体として過去を取り戻すためのおじいちゃんの旅を描いた純粋な映画ではないのだなという印象は拭えない。

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Cape God