劇場公開日 2010年12月23日

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「良くも悪くも『相棒』ファンの為の作品」相棒 劇場版II 警視庁占拠!特命係の一番長い夜 浮遊きびなごさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5良くも悪くも『相棒』ファンの為の作品

2010年12月25日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

楽しい

僕はテレビドラマを殆んど観ない人間なのだが、
この『相棒』だけは欠かさず観ている。
今回は待ちに待った劇場版第2作。

警視庁占拠事件、そして過去に日本国内で起きた反米テロ未遂事件。
2つの事件の捜査が、やがて警察庁対警視庁の
醜い権力抗争を浮き彫りにしてゆく。
巨大な組織の思惑に翻弄される個人の命……
これまで何度も『相棒』で取り上げられたテーマが、
かつてないスケールで描かれる訳だ。
シリーズ初期から観ている人間にとっては思わず
口が半開きになる程に衝撃的なシーンもある。
「劇場版でそれやっちゃっていいのかよ!?」と。

だが僕は『相棒』ファンである以上に映画ファン。
そして『最初からシリーズ化が予定されている映画以外は、
それ単独でも楽しめるものにすべき』という意見の人間だ。

例えば前作は、いたずらにスケールを拡げてやや話を収拾
し切れていない感があったものの、サスペンスエンタメとしては
単独でも楽しめたし、物語も感動的だったと思う。
だが今回の劇場版は、今年で9シーズン目を迎えたドラマシリーズを
ごく初期の頃から観ている人間で無ければ、カタルシスは
獲難いのではないかしら?

警視庁占拠という最高に面白いシチュエーションを用意しながら、
そこにはあまりサスペンスの比重は置かれていない。
反米テロ未遂事件の真相も無慈悲で恐ろしいものなのに、
普段の会話のような流れでサラリと明かされてしまっては驚きも半減だ。
前述の『衝撃的な展開』も唐突と言うか、
映画の本筋からは少し遊離してる感じを受ける。
全体の印象として、頭では面白い話、感動的な話だと思っているのに、
演出が淡白なせいか今ひとつハートに響いてこないのだ。
歯痒いラストもドラマファン以外に受け入れられるかどうか。

そして、画作り。
物語の巨大スケールがこちらに伝わり切らないのは
この画作りに依る所も大きいと思う。
『相棒』は毎回ユニークで面白いカメラワークを使うが、
大スクリーンで観ると「映画の画じゃないなあ」と感じてしまう。
じゃあ『映画の画』とは何だと訊かれると難しいのだが……
スクリーンで観た時のダイナミズムや緻密さに欠ける。

あまり使いたくない言葉だが、これは
映画というよりドラマのスペシャル版だ。
しかしドラマの熱心なファンには堪らない、必見の映画とも言える。
『相棒』としては満足。
映画としてはもう一息。

<2010/12/23観賞>

浮遊きびなご