劇場公開日 2011年2月26日

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「何を以て幸せというのだろう… 何がこの結末へと導いたのだろう…」死にゆく妻との旅路 waxcafeさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0何を以て幸せというのだろう… 何がこの結末へと導いたのだろう…

2011年9月10日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

難しい

実話を基にしたこちらのお話、おぼろげながら記事を読んだ記憶があります。
どういう状況でそうなったのか。きっとそれなりの理由があったはず。
それを知りたくて、映画を観てみたくなりました。

物語は、序盤から淡々と、淡々と、進んでいきます。
青いワゴン車に乗って旅をする二人の姿や、
時々夫が垣間見せる思い出の断片を共有するうちに、
それぞれの人間性や心情が見えてきて、
結末に至るその理由が、少しですが理解できた気がしました。
悲しく切ないお話です。

第三者目線で冷静に見れば、もっと別のやり方もあっただろうにと、
簡単に言えてしまいますが、当事者の歩んできた道や、
置かれた環境、運、物事のタイミング。そんないろんな絡みの中で、
彼らにはそれしか選択できなかったのではないか…そう思いました。
それが余計に悲しい部分でもありますが。

夫婦役の三浦さん、石田さん、二人の息のあった演技も良かった。
夫が、終盤に向け見せ始める、悲しく疲れた表情や、
無邪気に振る舞う妻が、一瞬一瞬に見せる悲しい目が、とても印象的でした。

この映画を観終わるころ、
昔見たアニメ映画「火垂るの墓」や、
フジテレビ放送のドラマ「ビギナー」の第七話に出てきた、
「アンパンは誰が食べた?」って話を思い出しました。
どちらも共通しているのは、貧困、無知の怖さ、悪意の無い罪。
いずれも悲しさと切なさを感じる、涙無しでは見られない名作です。

さて映画の終盤。
公園にある猿の檻が汚れているのをみて、突然夫が掃除を始めるシーンがあるんです。
僕は意味がわからなくて、え?この大変なときに何してるの?と思っていたんですが、
後に語られる夫の言葉にその理由を見つけたとき、ハッとさせられました。
物語のコアな部分が、このエピソードに隠されている気がしてなりません。

waxcafe