劇場公開日 2009年1月10日

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「彼は如何にして、革命家になったのか?」チェ 28歳の革命 mori2さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0彼は如何にして、革命家になったのか?

2009年1月6日

難しい

20世紀最大のカリスマ、チェ・ゲバラ。今も世界中の人々から、熱狂的な支持を受け続ける彼が、如何にして革命家となったのかを描いた本作。ソダーバーグ監督とデル・トロの執念が詰まったような、渾身の一作になっています。

 チェ・ゲバラについて、吾輩はそんなに詳細な知識を持ち合わせておりませんでした。“中南米のゲリラ活動家”“ひげ面の写真が有名”“どこかの国の政府に負けて死んだ”“Tシャツのデザインで、よく見かける”と言ったところだったでしょうか。この映画では、人々に自由と平等をもたらすことがどれだけ重要で、そしてその為には相手が如何に強大でも戦わなければならないということを、彼が如何に実践し、そしてその結果どのようにして“革命家”になっていったのかということを、鮮烈に描き出しています。吾輩の持っていたイメージを修正してくれるのに、充分な内容でした。いやむしろ、これほどまでに真摯に自らの主義、信念を貫いた生き方をした“チェ”という人物に、吾輩大いに惹かれました。フィデル・カストロは、キューバ人です。キューバ革命は、彼にとって祖国を我が手で救う為の戦いでした。しかしチェは、キューバ人でもないのに己と同じ志を持ったフィデル達に共鳴し、その信ずるがままに戦いに身を投じて行く。人として、これはなかなか出来ることではないと思います。そして更にはキューバ革命以降、世界各地の圧政に苦しむ人々を解放する戦いにも、その身を投じていくのです(この辺りのことは、続編のエントリで語らせていただきます)。チェの信念と情熱は、周りに波及し、絶対的な存在である強者(政府あるいは大国)に立ち向かう大きな力となっていくのです。
 この映画ではキューバ革命の成立までの行程に、後年(1964年)チェがキューバ代表として国連総会に出席し、演説するまでのシーンがカットバックで挿入されています。そのどちらもが、強者に対して一歩も退かず、果敢に攻めて行くチェの信条を映像で語っています。重厚かつ、インパクトのある映画に仕上がっています。

 前述しましたが、チェの顔写真がプリントされたTシャツを着ている人を、街でよく見掛けます。また浦和レッズのサポーターが持つフラッグに、描かれているのを見た記憶もあります。ファッションのアイコンとしても、世界中で使われているチェ・ゲバラですが、果たしてどれだけの人が、彼の真実の姿を知っているでしょう(Tシャツ着てても『誰コレ?』って言う人、結構いるんじゃなかろうか)?そんな人達に(吾輩もそんなに偉そうなことは言えませんが…)、ぜひこの映画を見ていただきたい。そして、彼が何故ここまで世界中の人たちから支持されているのかを、自分なりに考えていただけたら…と、思います。

mori2