劇場公開日 2008年6月7日

神様のパズル : インタビュー

2008年6月11日更新

角川春樹プロデューサー&三池崇史監督インタビュー

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今まで誰も見たことのない映画の誕生!?
今まで誰も見たことのない映画の誕生!?

――とてもテーマが大きく、最後までどうなるか分からない中での、映画の着地点に感動を覚えましたが、もはや三池監督はどんな題材でも映画として成立させられるのではないですか?

三池「作っていて、浄化されるっていうか、まだなんかリセットして、子供のピュアな心に立ち返ることが出来るっていうような感触を持つことが出来ましたね。作り終わって、また始まるっていう感じですよね。ひと回りしてスタートラインに立ったっていう」

角川「あのクライマックスでは、基一(市原)がサラカ(谷村)に寿司を食べさせるシーンがあるけど、俺の周りの女性たちからは『彼はまるで春樹さんですね』と指摘されたよ(笑)。『食え!』『うめえか!』っていう押しつけがましい言い方が俺にそっくりだったみたい(笑)」

壮大な物語は予想外の クライマックスへとなだれ込む
壮大な物語は予想外の クライマックスへとなだれ込む

三池「この映画は、2人の魅力的な役者に負うところが大きいと思います。彼らはテクニックで演じているのではなく、もっと生で直感的な、気持ちを大事にする人たちです。演技というものを訓練して、身につけている人には出来ない表現でしたよ。その上で、やってるうちにさらに良くなっていますからね。それと、映画を作る行為そのものがお互いの表現ということで一致しているんです。そこに説明なんかは入りませんよ。感覚的にアングルや間の取り方なんかが一致するわけですからね。だから、こっちも若い2人についていくために感性を敏感にさせておかねばならなかったというのはありましたね。そんなこんなで彼らと一緒に作ってみて、出来上がってみると、不思議なことに角川映画になっているんです(笑)」

角川「この映画で、監督の名前をクレジットから消したら、誰も三池の映画だって分かりませんよ。三池組の常連キャストがいるから分かる人もいるかもしれないけど、映画自体は今までの三池ではない」

三池「今回みたいな場合、名前を変えて、新人として出るのも悪くないですよね。それで、写真みたら、あいつ三池じゃねえか?なんてね(笑)」

角川「映画を撮る前に主題歌が先に決まってたんで、それを聴かせたら、三池が『こんなまともな青春映画は初めてです』っていうんだよ(笑)。まあ、見終わった後に爽やかに出てこれる映画って、今までの三池の映画ではないからね。今まで(の三池の映画は)は大体暗くなって劇場から出てくる(笑)。映画というのは、こういったように今までやったことのない意外な組み合わせで作ることが面白いんだよね」

角川氏が「松山ケンイチ以来の逸材」 と太鼓判を押す市原隼人
角川氏が「松山ケンイチ以来の逸材」 と太鼓判を押す市原隼人

――今回主役を演じた市原さんは、現在かなりの売れっ子ですが、どういう俳優なんですか?

三池「彼にはどこか儚さがあるんですよ。社会人として、役者として、世間と上手く折り合いをつけて、それを利用して普通に生きていくというのとはどこか違う、バーっと燃えてしまう今一瞬の儚さがあります。今の若い俳優の多くはとてもお利口で、ワイルドなふりをしているけど、それは芸能界の中を上手く泳ぐための芝居で、そのイメージが多かれ少なかれ、彼らの芝居に反映されてますよね。だけど、市原はそれとは真逆で、何かを蹴るシーンがあったら、怪我をする俳優です。本気で蹴りますよ。その一瞬の集中力は本当に凄いです。元来、俳優という職業に求められていたのは、そういう一瞬の美しさだったと思うんですが、今世間が芸能人に求めているものは、美味しいモノを食べて、いい洋服着て、カッコいい車に乗ってというセレブっぽい成功しているイメージなんですよね。そんな中で、彼はちやほやされる芸能人になりたいという感じがまったくない。とてもピュアなんです」

――谷村さんも今年注目の若手女優ですね。

三池「女優は、当然角川さんにお任せです(笑)」

角川「俺と三池で一緒にオーディションをしたとき、彼女を見て、俺は三池が嬉しそうな顔をしているなと思ったんだけど、三池は俺が嬉しそうな顔をしていると思ったみたい(笑)。彼女は近頃珍しい純な普通の高校生だと思ったんだけど、それは俺が映画で少女を選ぶときの基準なんだよね。とても新鮮に見えたよ」

三池「谷村は母親のような女性でしたよね。いいお母さんになるような気がしましたよ。見かけは子供にしかみえないんだけど、ちょっと怪物めいた瞬間がありました」

今後も多くの新作が待機中の “10代の演技派”
今後も多くの新作が待機中の “10代の演技派”

――今回は、角川組と三池組のキャストの両方が、脇を固めてましたが、やはり遠藤憲一さん、塩見三省さん、國村隼さんあたりが出てくると映画が引き締まりますよね。

角川「そうそう。少ししか出ていないのに、ちゃんと存在感があったよね」

三池「そこらへんは、いわゆる映画的説得力というやつです(笑)」

――素晴らしい新コンビの第1作を作り終えたわけですが、今度は角川さん主演で1本撮るのはどうですか?

三池「武術の達人を角川さんに演じてもらって、アクションではない武術家の静かな闘いを描くというのはいいかもしれませんね。もうひとつは、それとは真逆のエンターテインメントで、角川さん流のチャンバラ映画もいいと思います」

――角川さんの殺陣は凄いでしょうから、楽しみですね。

角川「この前、木剣の素振りを3万3000回したよ。これは中々信じてもらえないんだけど、自分の中に神が入って素振りをさせているんだよね。うちの社員が見ていたそうだけど、2万3300回にいったら、白い龍が俺の両肩から抜けていくのが見えたっていうんだよ。それまではいい調子で振っていたんだけど、その龍が抜けた後からは凄まじくキツかった(笑)。まるで、神が俺に試練を与えているかのような感じで、今まで経験したことないくらい辛かったね」

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