劇場公開日 2008年9月13日

「極上の、動く絵本へようこそ。」パコと魔法の絵本 とみいじょんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0極上の、動く絵本へようこそ。

2022年8月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

楽しい

めくるめく、〇〇ワールド。
 映像のるつぼ。パラレルワールドと思いたくなるような、その世界観。
 箱庭の中での物語。

 ファンタジーの世界に浸れるのかと思ったら、のっけから、どこに連れて行かれるんだああという展開。最初のリズムにのれたら、やがて釘づけになる。
 色・色・色。雑貨・雑貨・雑貨。そして凝りに凝った舞台。飛び出し動く絵本のようなアニメに、ポップなCGアニメ。

主筋は王道。心がひねくれた老人と純真な少女を主軸として、一癖・二癖もある個性極まれる人々が、少女のためにできることを一生懸命やった物語。優しさに触れられる。大切な関係についても、ジーンと來る。
 大人にとっては好き嫌いが分かれるかな。子どもの方が素直に喜びそう。

 映画公開時のキャッチコピーは「子どもが大人に読んであげたい物語」とな。

個性が…。
 アメンボ家来に、ミズスマシ家来、ザリガニ魔人に沼エビの魔女、緑のタイツ男…。インパクトありすぎて…。私の極めつけはガマ姫…。ザリガニ魔人といいとこ勝負ですが(^_~;。うわ~あ、夢に出てきそう。
 あの役者のあんな演技も見どころです。土屋さんは期待どおりですが、國村さん、妻夫木さん、上川さん、加瀬さん、小池さんは期待を軽く裏切り、絶妙。こんな役もおやりになるのね。
 めちゃくちゃな役なんだけれど、月夜に振り向いた妻夫木さんの美しさ。それまでの展開。それからの展開。
 ぶっ飛んだコスプレと、振り切れた演技の小池さん(初見ではどなたかわからず)。でも、パコの絵本をベットからテーブルに戻すときの優しさ・しっとりさ。
 山内さんとサダヲさんが好対照のよいアクセント。舞台俳優の強みを見せる。
 上川さんは、どちらかというとミュージカル?どこまでが冷静で、どこからがおふざけなのか。その切り替えの巧みさで、異様な世界もとい、この病院の世界観にに連れて行かれる。うん、正真正銘のピーターパン。
 加瀬さんも、私にとっては新鮮。こんなおとぼけの役もなさるんだ。(浩一とその息子の二役、こちらもはじめは加瀬さんと気づかず)
 そんなふうに、コスプレ・舞台衣装も見もの。爆笑しながらも、職人芸にくすっとな。
 子役は、アヤカちゃんもかわいいが、室町とタマ子の少年・少女時代を演じた子たちも良い。

映像・色彩は好みが分かれるかな。
 金粉が舞うザ・おとぎ話というようなセットと、極彩色の、眼がチカチカして、忙しい、おもちゃ箱がひっくり返ったような世界の融合。騒がしいとみるか、絵本の世界と浸れるか。
 「ウゴウゴガール」とか子ども番組向けかと思ったけれど、大人の心にこそ沁み込んでくる。ただ滅茶苦茶にCG挟み込んでくるんじゃなくて、「うまい」「座布団1枚!」。極めつけの職人芸。

脚本も。
 情緒を味わわせてくれるが、脈絡なくさしはさまれるギャグ。その一つ・ピンポン。正直、物語中盤までは、ウザいと思っていたが、ラストに効いてくる。
 役者の掛け合いも,間がいい。テンポがいい。リズムがいい。パコが音読する絵本の文章も、記憶に残り、口ずさんでしまう。
 童話の言葉が、登場人物の台詞が、ストレートに心に飛び込んでくるし、隠し玉で後からジーンと来るものも。

リアリティより、舞台を意識した、”作り物”感を前面に出した演出。
 私ははまったが、これも好き嫌いが別れるだろう。

なんてこった、これ以上何も引けない、何も足せない。完成された、なんて絶妙なバランス。

作り手が、振り切って、楽しんで作ったことが伝わってくる映画。
だから、こちらも、思いっきりゲラゲラ笑いながら楽しむしかない。
元気がでます。

(原作である舞台は未見)

とみいじょん