劇場公開日 2005年2月5日

「『オールドボーイ』の衝撃がかすんでしまうほど重い。そして、帰りのエレベーターの中では思わずわき腹を押さえてしまった・・・」復讐者に憐れみを kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『オールドボーイ』の衝撃がかすんでしまうほど重い。そして、帰りのエレベーターの中では思わずわき腹を押さえてしまった・・・

2019年1月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 普段なら、DVDがまもなく発売されるので観ないところだったけど、ペ・ドゥナをスクリーンいっぱいに感じたいため観てまいりました。彼女はひとりっきりの革命家。こういう風変わりな役がピタリとはまるのです。しかも彼女のヌードもあるので、見逃すわけにはいきませんよね。しかしまぁ、いきなり臓器売買で腎臓を取られちゃいますので、最初から痛い、重い、悲しいと三拍子揃った凄まじい映画でした。

 主人公リュウ(シン・ハギュン)は聴覚障害者。腎臓病を患う姉のために移植手術を嘱望するものの自分の腎臓では血液型が合わない。落ちこんでいた彼に追い打ちをかけるように溶接工場から解雇され、闇組織に自分の腎臓を売り金も騙し取られてしまう。皮肉なことに、直後にドナーが見つかり、姉の手術日が決まったのだ。しかし、騙し取られて金はない。そこでヨンミ(ペ・ドゥナ)の助言により金持ちの娘を誘拐することに・・・

 この物語では、「皮肉なことに・・・」と思われるシチュエーションに何度も遭遇する。「手術費用を得たと思ったら、皮肉にも・・・」「誘拐した娘を返そうと思ったら、皮肉にも・・・」等々、運命のいたずらに翻弄される本当は優しい主人公が徐々に暴力性を帯びた復讐者へと変貌を遂げていくのです。そして、暴力の連鎖、因果応報といった避けられない命題によって、タイトルが示す「復讐者へ同情」することさえも虚しくも否定され、暴力への嫌悪感だけが残る・・・

 全体の構図としては、娘を誘拐された電気会社社長ドンジン(ソン・ガンホ)というもう一方の復讐者をも生み出し、感情線が入り乱れることになるのですが、労働者と資本家、障害者と健常者といった図も対照的に描いています。しかも、設定や小物の伏線に無駄が一切感じられないのです(あるとすれば、下ネタ過ぎるコミカルなシーン)。また、音響効果やカメラアングルに凝っていて、スクリーンの迫力に圧倒されっぱなしでした。

 ラストには、「ヨンミの仲間のテロリストだ」と思わせる台詞がありましたけど、ぎこちないナイフの持ち方を見ると、とてもテロリストには見えません。多分、ドンジンに不当解雇された労働者たちなのだろうと妄想しています・・・

kossy