劇場公開日 2003年12月13日

「【”貴方は大切な人を殺した人間を赦す事が出来ますか・・”ダルデンヌ兄弟がエンタメ性を一切排した独特のスタイルで観る側に重いテーマを投げかけた作品。】」息子のまなざし NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【”貴方は大切な人を殺した人間を赦す事が出来ますか・・”ダルデンヌ兄弟がエンタメ性を一切排した独特のスタイルで観る側に重いテーマを投げかけた作品。】

2022年3月10日
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鑑賞方法:VOD

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■ご存じの通り、ダルデンヌ兄弟の作品は、「イゴールの約束」「ロゼッタ」でもそうだが、エンタメ性を一切排除したドキュメンタリーの様な風合で、重いテーマを描いている。
 それは、不法移民問題であったり、貧困格差に会ったり、身近で起こっているテーマを扱っている。
 今作は、それよりも重いテーマを扱っている。
 今作の主人公オリヴィエを演じた今や名優と称される、オリヴィエ・グルメは今作でダルデンヌ兄弟作品は三作目の起用であるが、その期待に見事に応える、抑制した演技で、観るモノを惹きつける。

◆感想

 ・もし、自分の子供を殺した人間が目の前に現れたらどうするか・・。重いテーマである。
 今作でも、5年前に幼き息子を殺されたオリヴィエ(オリヴィエ・グルメ)は、劇中一切笑顔を見せない。職業訓練校の木工の先生として、淡々と毎日を送っている。

 ・多分その事件が切っ掛けで分かれた妻と再会するシーン。オリヴィエはその前に職業訓練校にやって来た息子を殺した16歳のフランシスと出会っていた。
 妻が、再婚の話と子供が出来た事を切り出すと、
 ”何故、今なんだ!”と声を荒げるオリヴィエ。
 彼の中では、哀しき出来事は全く解決されていないのだ。

 ・フランシスを自らの教室に受け入れ、彼の話を少しづつ聞いて行くオリヴィエ。だが、彼はその後必ず腹筋をする。怒りを発散するかのように・・。

<ラスト、人里離れた木材所でオリヴィエはフランシスに”お前が殺したのは、私の息子だ”と告げる。そして、”5年も少年院に居たんだ”!”と逃げるフランシスを林の中で組み伏せ、首に両手を掛けるオリヴィエ。
 だが、彼は直ぐにその手を放し、二人は共同作業で木材を梱包し始める。
 人を赦す理由とは、何であるのか・・。観る側にそれを問いかける見事な作品であると思う。>

NOBU